スンジョの戸惑い 52
いよいよ今日は待ちに待った修学旅行。
口を利かないまま、ハニは冷たいスンジョに声を掛けたくても掛けられなく、スンジョはスンジョでハニと話をするタイミングを逃してしまっていた。
「ハニちゃん、これ少ないけれどお小遣いの足しにして。」
玄関を出る時にグミからそっと綺麗な封筒を手渡された。
「おばさん・・・・そんな・・・・洋服も買ってもらったし。」
返そうとする封筒をグミはハニの方に押し付けるようにした。
「これは私からではないの・・・・・おじさんがね、娘がいたらこんな風に修学旅行に渡したいって言ってたのよぅ。」
親友の娘というだけなのに、本当によくしてくれる。
断るのも悪いと思い、有り難く受け取ることにした。
「行くぞ。」
冷たくはあるが、何日かぶりに聞いたスンジョの声に嬉しくて涙が出そうになった。
「うん!」
グミもそんな二人を見て、ここ数日口も利かないふたりの様子に心配をしていたが、一緒に家を出て行く姿に安心していた。
「お兄ちゃんったら、素直になればいいのに・・・・・さぁ、二人のシーツでも変えてあげないきゃ・・・・・・」
シーツ交換は、家族が出掛けた後のグミの仕事。
カメラを持ってスンジョやウンジョ、それに溺愛しているハニを追いかけるばかりではなく家事をすることがグミの本当の仕事。
スンジョとウンジョのシーツを交換して、ハニの部屋に入った。
「あら?ハニちゃんったら、何か忘れているわ。」
机の上に生理痛の時に服用しているハニの常備薬が残されたままだった。
「大丈夫かしら・・・・・ハニちゃん、ここにあるっていう事は・・・今そうなのよね。楽しい修学旅行が辛い修学旅行にならないといいわね。」
家からずっとキャリーバックを二人分持っているスンジョの後を、必死に付いているハニの足音を聞いていると、不思議と今までイライラとしていたことを忘れそうだった。
素直な気持ちになれそうだと思った時、地下鉄の駅の出入り口に、アインが立っていた。
その瞬間、スンジョは立ち止まり、ハニのキャリーバックを振り向きざまに付いて来たハニに渡した。
「アインに、持って行ってもらえ。」
アインの存在に気付いていないハニは、急に冷たい言い方でキャリーバックを突き返された事に驚いて顔を上げた。
「エッ?」
折角いい感じになりかけた時だったのに、スンジョはまた不機嫌スンジョに戻った。
「ハニちゃん・・・あれ?修学旅行に行くの?」
「・・・・・・うん・・・・あの・・・・急ぐから・・・・・・」
スンジョと一緒の地下鉄に乗って行こうとキャリーバックを持って走ったが、ほんのちょっとの差でスンジョの乗った地下鉄のドアが無情に閉まった。
0コメント