スンジョの戸惑い 55
ハニの座席は最後部。 そこには、スンジョがすでに座り本を読んでいた。
「ス・・・・スンジョ君・・・・・・・」
スンジョはチラッとハニの方を向いて、また膝の上の本に目を戻した。
ハニの乗った1号車は、殆どが1クラスの優秀な生徒ばかりだった。
「ハニ!それじゃあね。」
「ありがとう、ミナとジュリ。」
ミナとジュリは、ハニに手を振って同じ1号車の自分たちの座席に着いた。
「お邪魔しま・・・・・す。」
「・・・・・・・・・・・」
最後部座席は5人座れるのに、まるで仕組まれているようにハニとスンジョだけ。
現地に着くまで不機嫌なままで一言も話そうとしないスンジョと、隣同士に座るのに息が詰まりそうだった。
「あの・・・・・さ・・・・・私何かしたのかな?」
「別に・・・・・・本に集中したいから、話しかけないでくれないか?」
「は・・・い。」
ハニはスンジョに言われ、話す相手もいなくつまらなくて、ひしひしと孤独感を感じながら窓の外を眺めた。
ガラスに映るスンジョをそっと見ていることしかできない、長い長い現地までの道のり。
オレはいったい何をイラついているんだ。
ハニがアインと親しそうに話をしていたからか?大体ハニは人当たりが良くて、ジュングや他の男子とも気楽に話をしているじゃないか。
アインとハニの何が気に入らないんだ?
オレは・・・・・ 本を読んでいても同じところばかりで先に進まない、ハニがガラスに写っている自分を見ていることもスンジョには判っていた。
痛っ・・・・ヤダ・・・・お腹が痛くなって来ちゃった・・・・・薬・・・えっと確かこのポーチに・・・・・あれ?無い・・・・入れたのに・・・
ハニは昨日から始まった月1の女の子の日の痛みに不安を感じた。
何時も生理痛の酷いハニはクスリを常備していた。
昨晩服薬して、出掛けにポーチに入れようと思って机の上に置いたままにしていた事に気が付いた。 どうしよう・・・・・・
顔をしかめて辛そうにしているハニにスンジョは気が付いた。
「どうかしたのか?」
「うん・・・・・・ちょっと。」
流石にスンジョには生理痛だとは言えなかった。
他の男子にだって言えないのに、好きな人には生理痛だと知られたくない。
「生理痛か?」
サラッと顔も変えずにスンジョはハニに聞いた。
「ど・・・・・ど・・・・・・」
「同じ家に住んでいるんだ。いつお前に生理が来て薬を飲んだのかくらい知っている。」 「薬・・・・・忘れて来ちゃった・・・・・・」
ハニがそう言うとスンジョは立ち上がった。
「窓側だと冷える。こっちに変われよ。」
「で・・・・・でも・・・・・・・」
「いいから、エンジンが下に有って、足元と座部の部分が温かいから少しはマシだろう。後からソン・ガンイ先生に言えば薬を持っているはずだ。」
他の人にわからないように、スンジョとハニは座っている場所を交代した。
暫くすると、不思議と足元からと座部からの熱で痛みが、徐々に和らいで来た。
「楽になったか?」
「うん・・・・・ありがとう。」
スンジョは自分の着ていた上着を脱いでハニの膝の上に掛けて、また本を読み始めた。
何日ぶりだろうか、スンジョと話をしたのは。
痛みが和らぎスンジョと話をして安心したのか、ハニはうつらうつらと眠り始めた。
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