スンジョの戸惑い 63
お袋の企みだな。
どうしてお袋は昔から、オレを自由にさせてくれないんだ。
親父が何も言わないことを良いことに、オレの全てを手のひらで転がしているつもりか?
幼稚園の頃のオレがどんなだったか知っているのに・・・・・・ いくら、ハニを自分の娘にしたいくらいに可愛いと言っても、オレと同じ服を着せることはないだろう。
学校ではハニの事を好きだと言う事を公言していない理由を判っていないにしても、それを態々修学旅行で判るようにするのはやり過ぎだろう。
「ペク・スンジョ。私たち、ちょっとトイレに行って来るから待っててくれない?」
馴れ馴れしくチョン・ジュリが、1組の男子三人を呼びつけ、カバンを持たせてトイレに行った。 「スンジョ・・・・お前オ・ハニと・・・」
1組の中で一番仲の良いソン・ヘジンが顔を赤らめて聞いて来た。
「お前まで低俗なことを聞いてくるのか?」
ヘジンは、お互いを蹴落としてでも上位を狙おうとしている1組の中では、せかせかすることなくマイペースでおっとりとしている。
オレが一言冷たく言葉を返しても、動じる様子もない。
将来の進路は弁護士、曾祖父さんの代から続く弁護士の家柄。
「違う・・・違う・・・・スンジョが、オ・ハニが好きだけど付き合っていないって言ったけど、彼女じゃないのなら・・・・・・」
「彼女じゃないのなら何だ?」
「オレが付き合ってもいいのか?彼女けっこう人気があるんだ。」
ハニが人気が有るって?だから何なんだよ。
「オレは別にいいけど、ハニがどんな返事をするのか知らないぞ。」
オレには絶対にハニが他の男に、目移りなどしないことは判っている。
だけどオレはそんなこと誰にも言う気などない。
ハニ自信がオレ以外を好きになれないことは知らないのだから。
一方、トイレの中でミナとジュリを待っていると、1組の中でも特にスンジョに近づきたい女子が、ハニの周りをぐるりと取り囲んだ。
「オ・ハニ・・・あんたってどういうつもりでなの?」
ミナとジュリのいるトイレとスンジョたちが待っている場所から、少しづつ近づきながら離されてしまった。
「スンジョ君が好きだと言ったからって、得意にならないで欲しいわ。」
「ホント!一緒に住んでいるからって・・・嫌がるスンジョ君を引き留めているのでしょ?頭の悪いあなたにはそんなことを言う権利なんてないんだから。」
頭が悪いのがそんなにいけないこと?
その女の子たちの一人がハニの頬を叩こうとして、ハニが目を瞑った瞬間<パシン!>と言う音がした。 だけどハニに、は打たれたはずの自分の頬が痛くないのに気が付いて、そっと目を開けた。 目の前にはスンジョの広い背中。 ハニの頬がスンジョの背中に触れそうな距離。
あれ?今、頬を叩かれたはずなのに・・・・・ ハニは何気なくスンジョの顔の高さの方に目を上げた。 スンジョの頬に思い切り叩かれたのが判るくらい、綺麗な白い頬に赤い手の跡が付いていた。
「オレはハニと付き合ってはいないが、人を物陰に連れ込んで、問い詰めるようなことをする人間は嫌いだ。」
スンジョは口元に手を持って行って、心配しているハニの顔を見てニヤリと笑った。
「ハニとは付き合ってはないが、一緒の家に住んでいるんだ。一緒にいる時間が長いから別に今更付き合うなんて面倒なことをするはずないだろ?」
思いもよらないスンジョの告白。
一緒に住んでいることは秘密の筈だったが、何故なのかハニのために隠していたことを言いたくなってしまった。
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