スンジョの戸惑い 64
「言っちゃった。」
「ああ・・・・言っちゃったな。」
自分がこんなに変わるとは思わなかった。
他人がどうでもいいと思ってずっと過ごして来たのに、明るくて何にでも一生懸命にバカみたいに努力をして、オレがどんなに冷たくあしらっても、オレを好きでいるハニを見ていたら、同じクラスで名門大学を目指して勉強をしている人間の方が、逆にバカに思えて来た。
勉強が出来なくてバカと言われているハニの方が、もしかしたら人間的には優れているのかもしれないとも思った。
『ありがとう・ごめんなさい』と言う、最低限の挨拶さえも言えないオレを含めた1クラスの仲間。
言えてあたり前の言葉が言えないのだから、勉強が出来るだけの人間が間違っているのだと思えた。
ハニの友達のミナやジュリにしても、お袋から頼まれていることは判っているが、他人のために協力をしようと思う事が逆に格好よく思える。
今日までスンジョは、自分のためにならないことはしない。
そう思っていたことが、はっきりと間違いだったと思った。
「付き合っていないって言ったから、スンジョ君の言う好きってどういうことなのか判らなかった。」
「付き合っていないとは言ってないぞ。」
不思議そうに、ハニはスンジョの顔を見て聞いた。
「言ったよ・・・・・付き合っていないって・・・・・・」
「オレは、付き合ってはいないって言ってたはずだ。意味は違うだろ。」
「付き合っては・・・・・・付き合って・・・・・・付き合っては・・・」
ブツブツと言うハニのオデコをピンッと叩いて、スンジョはクスッと笑った。
「ハニに判らなくっていいさ。みんなが待っているから行くぞ。」
スンジョの告白を聞いても、1クラスの中では特に気にする人もないからこれからどうするかは心配しなくてもいいが、きっと物陰から観察をしていたミナたちは直ぐにグミに連絡を入れるのだろう。
スンジョが手をそっとハニの前に出すと、ハニは嬉しそうにスンジョの手に触れた。
顔を赤らめて繋いだ手を見ているハニは、スンジョの告白を何度も何度も小さな声を出して 繰り返していた。
そんな姿がスンジョには、どうしようもなく可愛く見えた。
ペアルックの二人は、街中ではかなり目立った。
背が高くて綺麗な顔をしたスンジョに、子供みたいにニコニコと笑うハニ。
高校生らしい雰囲気の二人は、グミに仕組まれた自由行動を楽しんだ。
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