スンジョの戸惑い 72
壊れた物は元には戻らない。
ハニが欲しくて買ったストラップは、呆気なく壊れてしまった。
自分とハニをくっつけるのに一生懸命なあの人が加わらなければ、こんなことにはならなかった。
人のせいにするなど、スンジョらしくはないが、何故だろうかグミのせいにしていた。
バスに乗り込むと、一番後ろの決められた座席にハニの手を引いて乗り込んだ。
ハニへの気持ちを公言したスンジョは、人目を気にする様子はなかった。
「なんだ?これは・・・・・」
「どうかしたの?」
ハニはスンジョの後ろから覗き込むと、座席に施されているその飾り付けに驚いた。
「誰がやったんだろう・・・・・・」
「お袋のヤツ・・・・・」
一番後ろの席はスンジョとハニが密着して座らないと座れないくらいに、クッションや造花で華々しく飾り立てられていた。
「やっぱり・・・・・」
お袋はオレを、修学旅行先でも監視するのか?
クッションは、しっかりと固定されていて動かす事も出来なかった。
スンジョたちの座る最後部の席は荷物が置かれ、それ以外の席は空いている所も無く全く座れなかった。
「どかしてもらおうか?」
「無理だろうな・・・・・・・」
「どうして?」
座席は全て埋まってるし、棚の上には置けない大きさだし・・・・・・おまけにトランクルームにはみんなのキャリーバックで入れることも出来ない・・・・全く何を考えているのやら。
スンジョは仕方がなく、ハニを奥の窓際の席に座らせた。
「狭いでしょ?スンジョ君背が高いから、変わろうか?お腹も痛くないから。」
「いいよ・・・・・・」
そんなやり取りをしていると、前の座席の男子生徒が背もたれの上から、顔をひょこっと出してニヤニヤしながら話しかけた。
「お前ら付き合ってるんだってな。おっと・・・付き合ってはいないって言ってたっけ。一緒に住んでんだもんな。」
「お前・・・・・・」
まるでスンジョの話をどこかで盗み聞きでもしていたように≪付き合っては≫の≪は≫を強調するように言った。
スンジョの怒りは、グツグツと煮え始めて今にも吹き出しそうだ。
前の座席の生徒が言ったことがバス内に響くように聞こえたのか、みんなの視線が最後部に座る二人に注がれた。
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