スンジョの戸惑い 79
「すみません・・・・スワンボートは四台しか今日は使えなくて・・・・・後二時間待っていただかないと・・・・・・・」
「それなら、他のボートにするわ。」
店員はスンジョとハニを見て一瞬驚いた。
「いいんですか?」
「私は漕ぐことが出来ないけど、彼は天才で何でも出来るんですよ。バカにしないでください。」
ボート乗り場の係員は怪訝な顔をしてボートの準備をするために、チラッとスンジョの顔を伺ってその場を離れた。
係員は、ボートを漕げるかと言うことを聞いたのではない事は、スンジョには判っていた。
「やな係員ね。スンジョ君がこんなに格好良いからきっと古い型のボートをこげないと思ったんだよ。古臭いボートでも簡単に出来るよね?」
「簡単さ・・・・・だけど・・・知らないのか?」
「知らないって?」
「この池でボートに乗るカップルは別れるって。」
ビックリしてハニは後ろに飛んだ。
「止める・・・・・・・噂は案外当たる時もあるから・・・・・・」
慌てふためくハニを見てスンジョはクスクスと笑った。
「迷信さ、オレは噂が事実ならどうなるのか知りたいから、乗って見るのもいいかと思うんだけどな・・・・」
スンジョの上着の裾を引っ張り、用意されボート乗り場に行った。
「迷信もただの人の噂だ。偶然別れることになった人だったかもしれないし、別れない人だっている。一々そんなの気にしていたら、ハニの頭じゃ学校の勉強も実にならないぞ。」
ニヤッと笑ってスンジョは先にボートに乗ってハニを待っていた。
緊張して乗っていたボートから降りたハニは、胸の位置で両手を組み、
「どうか神様、スンジョ君と判れませんように!!」
と心の中で何度も何度も祈っていた。
「今度はどこに行く?」
「明洞!」
明洞に行けばクラスメートと出逢う危険はあった。
知っている誰かに会うからだけではなく、人が多い事がスンジョは苦手だ。
しかし、ハニからグミと内緒にしていることを自分に話したように見せかけるため、直ぐに帰宅しては自分の考えていることが、グミにばれてしまう事は判っていた。
「ねぇねぇ、プリ撮ろうよ。」
自分の苦手な事。
それは写真に向かって、面白くもないのに笑うこと。
狭い空間でスンジョは有ることをしようと思いついた。
0コメント