スンジョの戸惑い 81
「ただいま。」
ハニが玄関に入ると、リビングでふたりの帰りを待ちわびていたグミが、ハニに飛びつかんばかりの勢いで迎え入れた。
「ハニちゃん・・・お兄ちゃんに・・・・あらっ!まぁ!・・・・・ふふふ、そういう事をしてきたの・・・。お兄ちゃんも結構普通の男の子だったのね。」
「ああ、オレも普通の男さ、健康的で思春期の。」
スンジョとグミはお互いに、心からは笑っていない表面だけの笑顔でお互いを牽制した。
「何の事ですか?」
何も意味が分からないといったハニは、グミの含みのある笑いを不思議そうに眺めていた。
「さぁ、こっちで私と一緒にケーキを食べない?ハニちゃんも疲れたでしょ?お兄ちゃんは体格もいいし・・・フフフ・・・若いからぁ・・・・」
「おばさん、私はスンジョ君と一緒の歳ですから全然疲れていませんよ。まだご近所を全力疾走出来るくらいの体力はあります。」
グミの想像力はハニとは違い、今の言葉を聞いてあらぬ方向に向いていた。
それをスンジョは何も言わず、ただニヤニヤと笑って二人のやり取りを見ているだけだった。
「いい?ハニちゃん、もし体調の変化があったら、おばさんに隠さず話してね。遠慮はしなくていいから私を本当のお母さんだと思ってね。」
「はい!ありがとうございます。ママがいないので、パパに聞けない事を話す時は、おばさんだけが頼りです。」
スンジョは二人のやり取りがあまりにも可笑しくて、吹き出しそうになるのを必死に堪えていた。
「バカオ・ハニ!お前・・・首・・・どうしたんだ?赤くなってるぞ。」
「首?」
「ウンジョ!子供は大人な事情を深くは聞いてはダメよ。お兄ちゃんくらいの年齢になったら、あなたも同じことをするようになるんだから、その時になれば判るわ。」
グミはハニの首筋に付いている赤い印を、スンジョが付けたものだと完全に勘違いをしていた。
赤い印は確かにスンジョが付けた物には違いないが・・・・・ まんまとスンジョの策略に引っかかったグミは、何やらまた部屋にこもり準備を始めた。
翌日、ハニとスンジョが登校すると、二人を見てヒソヒソと話しこむ女子生徒が多かった。
ハニが教室に入ると、それまでに二人を見ていた視線とは違い、冷やかしたり羨ましがられたり、ハニに関しては嫉妬の様な視線だった。
その時、一人の生徒が7クラスの部屋に急いだ様子で入って来た。
「オ・ハニさん、教頭先生が呼んでいます。直ぐに進路指導室に行ってください。」
「進路指導室?」 「ハニ、あんた何をしたのよ。」
ハニの親友であるミナとジュリは心配そうに聞いた。
成績が悪い事で、教頭から何か言われるのは、定期テストが返された後には有るが、進路指導室に教頭がハニたちを読んだりすることは今までなかった。
「判んないけど、とにかく行って来るね。」
ハニは不安そうな顔をして、進路指導室に向かった。
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