スンジョの戸惑い 96
勉強は、授業をしっかりと聞いていれば解らないことはない。
テスト前の今の時期、オレには何もやることがない。
高校で習うべき事は、もう全て終わったから。
「ハニ、出掛けるぞ。」
オレの一言で、ハニは嬉しそうな顔をして立ち上がる。
まるで、子供が玩具を買って貰うときのように。
「嬉しいな!デートに誘われちゃった!」
オレの気も知らないで脳天気にデートだと言って喜んでいるハニが羨ましい。
ハニと付き合うようになっても・・・・というより、みんなの前で告白してから、多少は心の奥底でグツグツとしていた物が治まってはいるが、ハニみたいにはしゃぐことが出来ない。
「ねえ・・・どこに行くの?」
「さぁ・・・・・・お前はどこに行きたい?」
「スンジョ君の行くとこならどこでもいいよ。」
思った通りの答えが帰って来た。
何も言わなくても、腕お絡めてくるハニ。
すれ違う人の視線にイラつくのもいつもの事。
その度にハニが落ち込んでいる。
「また言われちゃった・・・・・あんなにカッコいい人の彼女があんなんだものって・・・・・・」
「気にするなよ。」
気にするなって言われても気にするのがハニだ。
映画でも見ようかと思って映画館前に向かっていると、誰かに声を掛けられた。
「スンジョ!デートか?」
振り向けば、同じクラスのヤツだった。
クラス順位42番。去年は2クラスでトップで学年成績は35番だった。
名前なんて知らない。
運よく上位から振り分けられて1クラスになっただけなのに、2クラス以下をバカにしている。
「お前はどこに行くんだ?」
「塾の掛け持ちだ。両親がアメリカのバークランド大に留学しろって五月蠅くて。」
「お前なら楽勝だな。」
「スンジョは塾に行かなくても余裕だな。勉強しなくても出来る天才だから。」
お前は塾に行っても変わんないだろう。
授業中に、1クラスのスピードに付いていけなくて、居眠りしているのに。
その名前を知らないやつと別れると、ホッとしてきた。
「お友達でしょ?バークランド大を受けるんだ・・・・・・。すごいね、頭が良いんだね。」
「名前も知らないヤツだし、アイツにはバークランドは無理だ。」
行きたい大学が無理でも、彼は行きたい気持ちがあるからまだましだ。
「何が見たい?アニメでもいいぞ。」
「子供扱いしないでよ、。もっと大人のでも観るわよ。」
「じゃあ・・・これを観るか?」
オレの指を指した方を見て、ハニは顔を赤くした。
ハニのように顔を赤くすることも、オレには無かったな。
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