スンジョの戸惑い 97
「スンジョ君・・・・こんなのを観るの?」
真っ赤な顔をしているハニの頬に指を立てた。
「バ~カ、高校生のオレ達には観られないだろう。その横だ。」
「からかったんだ・・・・・・・」
プゥッと膨れた頬をさらに強く押した。
「アニメの方が、眠くならなくてハニには良いだろ?」
ハニにアニメと言うより、オレ自身が何も考えずに、ただ暗い場所でボンヤリとしたかっただけだった。
日曜日の昼の映画館の、アニメを上映するスクリーンは家族連れで満席だ。
以前にハニが観たいと言っていたアニメ。
オレは全く興味もないし、観たいとも思わない作品だ。
別に観たくて来たわけじゃないけれど・・・・・・
隣りで子供と同じ笑うツボで笑っているハニが羨ましい。
涙を流して、何も考えずに腹の底から笑っているのだから。
二人は映画を観た後、やはり家族連れの多いファミレスに来て食事をした。
「スンジョ君、さっきから何もしゃべらないけどどうしたの?」
オレの事以外に悩みのないハニに聞いても意味はないけど・・・・・
「ハニ・・・・お前さ・・・・・進路は決まっているのか?」
「進路?う~ん、出来ればパラン大に行けれたらなぁ・・・・・って。外の大学に自力で行くのは私には無理だし。」
「ふ~ん、で・・・・お前どうして大学に行きたいの?勉強が嫌いだろう?」
「みんなが行くから行きたい・・・・・・・ていうか、大学って勉強ばかりじゃないと思う。将来何になるか、何がやりたいのか探す所だと思うの。」
将来、何になりたい・・・何をやりたい・・・・か。
「でもスンジョ君は良いよね。私は、料理は全く駄目だから、パパの跡を継ぐことは出来ないけど、スンジョ君は何でも出来るから何も悩まずにおじさんの会社の跡を継ぐことに誰も文句は言わないと思う。スンジョ君は産まれた時から、何も悩まなくても進む路が決まっているのよ。」
オレの進む路は決まっているのか・・・・・・
「そうだな、決まっているんだよな。」
オレは何の気なしに、窓の外で働いている清掃員の顔を見ていた。
額に光る汗を、薄汚れたタオルで拭き取り、ズボンの後ろポケットに入れてあるペットボトルの飲み物を美味しそうに飲んでいた。
「清掃員の仕事は大変だろうな・・・・・・・・」
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