スンジョの戸惑い 100
慌てふためいたのは担任のジオ先生より、ふたりの会話を聞いていた教頭の方だった。
教頭は天才スンジョがパランにいるという事を売りに、生徒募集に他校に見せつける様な生徒募集のパンフレットを作っているのだから。
「ペク・スンジョ君!!!じょ・・・・冗談だよね?」
「教頭先生、どうして冗談だと思うのですか?」
「そりゃぁ・・・・我が校の誇りの君が、清掃員になんか・・・・・」
スンジョはピクッと眉が動いた。
「清掃員になんか?先生は職業差別を教えるのですか?」
しまったと思っても、口から出た言葉を戻す事も出来ず教頭は口に手をやった。
「大学に行く気は有りません。進路希望は就職・・・とでもして出します。それじゃぁ・・・・・次の授業が始まるので失礼します。」
スンジョは唖然としている職員室内の先生達を無視して、職員室の出口に向かって歩き出した。
「ハニも行くぞ。もうすぐ授業が始まるから。」
スンジョに手を引っ張られ、驚いた顔のままハニは職員室を一緒に出て行った。
「スンジョ君・・・あんなこと言っていいの?」
「よくないだろうな。多分、親に連絡が行くだろうな。」
「だってスンジョ君はおじさんの会社の後継ぎなのに・・・・・・・大学に行かないと困るよ。」
スンジョは、急に立ち止まりハニの方に向き直った。
「その話は言うなよ。オレは親のレールを敷いた所を進みたくないんだ。これ以上進路の事は言うな。放っておいてくれないか?」
それだけ言って、スンジョはハニの手を放して自分が在籍している1クラスの方に向いて歩いて行った。
進路希望の事で両親に学校から連絡が行くことは判っていた。
学校からの連絡が父の方に行くことも判っている。
母グミは何も連絡を受けていないのか、いつもと同じように話をしながらハニと夕食の準備をしていた。
学校での出来事をこの家で知っているのは今はハニだけ。
スンジョは平静を保ったまま、リビングのソファーで本を読んでいた。
「あら?ガレージが開いたみたいだけど・・・・・今日は随分と早い帰宅ね。」
グミがそう言って暫くすると、息を切らしていつもと違う顔で玄関のドアが勢いよく開いた。
「パパ、お帰りなさ・・・・・い。」
スチャンは片手でグミに挨拶をすると、スンジョの座るソファーまで無言で行った。
「お帰り・・・・・」
本から顔を上げないのはいつもの事。
「パパの書斎に来なさい。」
事情を知っているから、どうなるのかと心配そうにしているハニの方をチラッと見て、スチャンの後ろに続いてスンジョは書斎に入って行った。
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