スンジョの戸惑い 101
いつもにこやかなスチャンが、難しい顔をして書斎に入って行ったことに事情を知っているハニだけでなく、グミとウンジョも心配そうにスンジョの後姿を見ていた。
「何があったのかしらね・・・・・。ハニちゃん、何か知ってる?
ハニはグミの問いに黙って首を横に振った。
知っていても言えない。
大好きなおばさんとおじさんが、あの話を聞いたらショックを受けるから、知っていても言う事が出来ない。
「話ってなんですか?」
スンジョには、スチャンが話したい事がどう言う事なのかは見当が付いていた。
「今日、教頭先生から電話があった・・・・・・・スンジョ、お前はまだ大学の進路希望を出していないのか?」
流石に教頭は清掃員になるとオレが言った事は、親父には話していないんだな。
「はい、行きたい大学が無いので。」
「テハン大に行くつもりではなかったのか?パパは出来ればパパの母校のテハン大に進んで経営学を学んでほしいが・・・・・もしテハン大を希望しないのなら留学しても・・・・・・」
「進学はしません。」
「進学しないって・・・・うちの会社は従業員も大学卒以上の学歴で採用しているから、後継者のお前が高卒では・・・・・・」
「教頭先生からは何も聞いていないのですか?オレは大学に進学しんないし、親父の会社も継ぐ気はありません。」
偶然お茶を持って来たグミは、スンジョの言葉を聞きトレイの上のカップを落としそうになった。
「お兄ちゃん、何を言っているの?パパもママも会社を継ぐのは長男:のスンジョだと・・・」
スチャンはグミに落ち付く様に手を引いて、自分の横に座らせた。
「じゃぁ、スンジョのなりたい職業とかがあるのかな?」
出来るだけ冷静に話そうとしているスチャンだが、膝の上に置かれている拳は震えていた。
「親父の会社を継ごうと思っていたのですが、産まれてからずっと決められているレールを歩んでいるようで、このまま困難な道を歩いて行く事のない人生を過ごしていいのか、目標も持たないオレが、どう生きて行ったらいいのか判らないのです。」
「スンジョ、パパもママもね、会社はあなたに・・・・そう思って来たの。親が敷いたレールを歩くのが嫌なのは判るわ。でもね、親は子供が苦労するのは見たくないの。」
「その気持ちは判るけど、何か刺激が欲しくて、今まで何も考えないでぶち当たる壁も無く平穏な生活が続けばと思っていました。そんな時にフと、ある職業の人が、仕事をしているのを見て、熱心に仕事をしている姿が羨ましく思えたのです。」
「その仕事とは?何か言って見なさい。」
「清掃員の仕事です。」
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