スンジョの戸惑い 105
静かに玄関のドアを開けると、ハニとウンジョが疲れ切った顔をしてソファーで眠っていた。
疲れ切って当たり前だ。
精神的なショックでも、体力的にはかなり疲労が大きくなる。
ハニの膝枕で眠っているウンジョと、気持ちよさそうに口を少し開いて眠っている二人を見ていると、疲れて家に帰って来た親父の気持ちが判るような気がする。
だから、親父は具合が悪くてもなにも言えなかったんだ。
眠っている時の人の心は、無防備で何も警戒していないから守ってあげなければと思う。
まだ高校生だから、何も出来ない事は判っているけど二人を守りたいと思う。
「おい、ヨダレが垂れているぞ。」
そう言って、ハニの開いているふっくらとした唇に、軽くキスをした。
その拍子にハニがビックリして目を開けた。
「お・・・・・お帰り・・・・・おじさんは?」
「今は落ち着いている・・・・担当の医師がいなくて、詳しい検査は明日からになる・・・・」
「パパがね・・・おじさんが落ち着いたらお見舞いに行くって・・・・・」
不安でハニがおじさんに連絡をしたのだろう。
苦手な料理をウンジョの為に作って、腕前を判っているけどウンジョも文句も言わずに食べたのだろう。
ウンジョを担ぎ上げるようにして、スンジョはハニの腕を取り一緒に立ち上がらせる。
「もう寝ようか?」
「食事は?」
「明日の朝、食べるよ。」
寝ぼけ眼のハニを見守りながら二階に上がって行く様子を、スチャンの事が心配で寝付けそうになく起きているギドンが見ていた。
「頼りになると言っても、スンジョ君は高校生だ。真面目で責任感のある子だから、一人で抱え込まないといいんだけどな・・・・」
娘ハニのスンジョへの思いを知っているギドン。
親友が倒れた事で、何かが変わるような不安を感じていた。
スンジョは部屋に入って、ウンジョを寝かせ、自分もシャワーを浴びて眠ろうとしたが寝付かれない。
いつもなら横になると直ぐに眠りに付けるが、父が倒れた時や病院での父の寝顔が頭から離れない。
不意に気になることがあり、スンジョはウンジョを起こさないように静かに起き上がり、パソコンの電源を入れた。
何を調べたいのかも判らないのに、ただ色々なワードを検索して時間だけが無駄に過ぎて行った。
スチャンの会社のホームページを開き、それを読んでいるうちにスンジョは一つの考えを思いついた。
これなら、親父の考えと自分の考えが上手く行く・・・・・
スンジョはカバンの中から、一枚の書類を出して記入した。
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