スンジョの戸惑い 110
「オレの進む路を、お前が決めるのか?」
「いけない?」
ハニはオレと同じ年齢で高校生とは思えない・・・・・
悪い意味でも良い意味でも。
無邪気過ぎる何も考えていない言葉が、オレの心を楽にしてくれている事は確かだ。
楽しそうに妄想に浸っているハニを、暫く観戦でもしていようと黙って観ることにするか。
「治らない病気の患者さんには、いつも優しく微笑んで・・・・ダメ!優しく微笑むのは私にだけね・・・・『大丈夫、きっとこの天才ペク・スンジョが治してあげます』・・・って言うの。幼い頃から病弱な美少女は、そんな素敵な若手医師のスンジョ君に、告白をするの・・・・・
<先生・・・私の気持ちを手紙に書きました。読んでください>
<手紙は受け取れない>
<どうしてですか?>
<オレには決めた女性がいるのだから・・・・>」
いつまでも続くようなハニの一人芝居。
すれ違う人は、不思議そうに眺めて時々ヒソヒソと何か言っているけど、こんな風にオレを愉しませてくれるハニに、もう恥ずかしくなるような妄想を止めてくれとは言えない。
「スンジョ君の医師としての腕を見込んで、国からの要請で小さな島の診療所に行くの。スンジョ君は優しいから、その島にずっと住んで島の人の病気を治すの。生涯をその島の人のために尽くしたいと言って。」
「へー、生涯をその島の診療所で生きて行くんだ。で・・・・お前はどうするんだ?オレのいないソウルで、いい男でも見つけるのか?」
最初はよく解っていないハニが、少しの間をおいて焦っている。
「私も・・・・付いて行く。だめ?」
「いいよ・・・いいけど、付いて来てお前はどうするんだ?そんな島なら、スィーツ食べ放題は無いぞ。」
「・・・・・・いいよ!スンジョ君がいる所ならどこにでも行くから。それが私の夢でもあるのだから。スンジョ君は毎日毎日研究をして、治らないと言われている難しい病気もペロッと治しちゃうの。」
そんな風にハニと話をするのは楽しい。
変化のない毎日を送っていたオレの所に舞い落ちて来たオレの活力剤。
勝手なハニの妄想に最初は戸惑っていたけれど、今はその妄想がオレを元気にさせてくれる。
「お前のその考え・・・・参考にさせてもらおうかな?」
「考えてみてね、お医者様になるって言う事。絶対にスンジョ君ならいいと思うの。」
ハニの言った言葉が、自分の胸の中でジンワリと広がり温かく感じて来た。
医者か・・・・・・
医療の世界は毎日が新しいものの発見。
オレに出来るだろうか・・・・・。
昼間に聞いたハニの話している様子を思い浮かべながら、机の上に広げた本を見ていた。
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