スンジョの戸惑い 111
「スンジョ君が病気を、ペロッと治しちゃうの・・・・」
そんなに簡単に病気が治るか・・・・・オレはお前が思うほど天才でも何でもないんだ。
普通に悩んで普通に人を・・・・・・・・
色々な大した事でもない事に悩む、普通の高校生なんだ。
ただ人より勉強が出来て記憶力が良いだけで、天才どころかただの高校生なんだ。
自分の気持ちをうまく伝えられないし、お前みたいに嬉しかったり悲しかったりする感情を素直に表せられないだけだ。
むしろ、お前の方がオレより優れているのかもしれない。
人として一番必要な物は何か・・・お前は信じられないかもしれないが、オレはそれを知らない・・・・
羨ましいよ・・・・お前のその素直に気持ちを表す能力が・・・・。
スンジョは、ベッドに入って天井を眺めながら自分が何をしたいのかを考えていた。
医者か・・・・・・・
小さな島の医者・・・・・・
スンジョは目を閉じて、引き込まれるように眠りに入って行った。
夢なのか現実なのか、まるで予知夢の様な温かく真綿に包まれたような感覚の世界。
白衣を着た自分に、磁石のように張り付いている女の子。
小さな女の子は、まるでハニの分身みたいにそっくりで、母親らしい女性がその子供を追いかけている。
母親は白い看護服を着て・・・・・
「スンハ!パパのお仕事の邪魔でしょ!こっちにいらっしゃい!!」
「だめ!!ママがスンハのパパを独り占めにするから。」
「いいでしょ!スンジョ君は、ママだけの物だから・・・・・・」
オレは物か・・・・・
夢の中のオレは心の中でそう呟いている。
看護服を着た母親らしい女性がオレの方に振り向いた。
「スンジョ君・・・・やっぱりお医者様になって良かったね。」
ハニだった。
夢の中のハニがニコッと笑って、オレは何かを感じたのか目を開けた。
「夢か・・・・・・それにしても何だ?妙にリアルな夢だったな。このままオレはハニと結婚するのか?お袋の思うつぼか・・・・・それなら、医者になるというのはオレの本心だろうか。親たちはオレが親父の跡を継ぐことを望んでいるはずなのだから。」
枕元の時計を見ると、起きるにはまだ早い6時。
隣のハニの部屋のドアが、静かに開いた音がした。
料理の出来ないハニが毎朝6時に起きて、オレとウンジョの朝食の用意をしてくれている。
真っ黒に焦げたトーストに、炭の様なベーコン。
毎日作る食事はとても食べられる物ではないけど、ハニのように一生懸命に何かをしてみたい。
ハニが見つけて教えてくれたオレの進む路。
良いかもしれないな。
白衣のオレと看護服を着たハニと、そしてハニとよく似た女の子の父親。
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