スンジョの戸惑い 120
「悪いなぁギドン、店まで休ませて。」
「何を言ってるんだよ、お前とオレとの仲じゃないか。それに夏休みにハニをどこに連れて行ってやろうかと考えていた時に、奥さんに誘ってもらって助かったよ。」
「毎年男ばかりでつまらないキャンプだったんですよ。今年はハニちゃんがいてくれるおかげで、なんだか楽しくてウキウキしてるのですよ。」
大人たちの会話を、後部座席のハニはニコニコと笑って聞いていた。
ハニの隣にはウンジョが、ウンジョを挟んでハニの反対側にスンジョが座っていた。
二人は同じようなポーズで本を読んでいる。
「ねぇ、ウンジョ君。席代わってくれない?」
「やだ!」
「お願い・・・・・着いたらビーチボールで一緒に遊んであげるから。」
ニヤッとスンジョと同じような顔で笑った。
「今度泳ぎのテストがあるんだ。泳ぎ方を教えてくれるのなら代わってやってもいい。」
「お・よ・ぎ?」
「小学生並みの体型だから、小学生の僕と釣り合うだろ?」
ウンジョがそう言うと、スンジョはウンジョにハニと場所を代われと合図をした。
ハニはスンジョの隣に座り、ピッタリとくっ付くとウンジョにアッカンベーをした。
(ったく、小学生のウンジョを相手にしてガキ!)
スンジョは自分の横に来たハニの手を、そっと誰にも気づかれないように繋いだ。
ハニはそんなスンジョの行動に一瞬驚いて緊張したが、スンジョの大きくて温かい手を握り返した。
スンジョはこのキャンプの間、きっと父スチャンが自分の進路について聞いて来ることは判っている。
ハニのこの手から、少しでも勇気が欲しくて本を開いたまま静かに目を閉じた。
どれくらい時間が経ったのだろうか、右肩に何かの重みを感じて目を開けると、ハニがスンジョの肩にもたれて居眠りをしていた。
ハニのその隣にいるウンジョも、朝が早かったせいか本を開いたまま、うつらうつらとしていた。
間近で見るハニの寝顔が可愛くて、ウンジョにブランケットを掛けるフリをしてスンジョはハニの少し開いたふっくらした唇に軽いキスをした。
目的地であるオートキャンプ場が近づき、混雑しているのか車の流れもユックリになって暫くするとようやく駐車場に到着した。
海岸沿いにあるオートキャンプ場は、家族やグループで沢山の人たちでにぎわっていた。
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