スンジョの戸惑い 123
「何だよ・・・・浮き輪?」
「だって・・・・・泳げないんだもの・・・・・」
可愛らしいイチゴ柄の浮き輪を抱えて、泳ぎを教えてもらおうとスンジョの所までハニは来たのだった。
「まさか・・・・本当に泳げないとは、思わなかった・・・・」
呆れた顔のスンジョに、ハニは泳げない事が恥ずかしいという顔で見上げた。
スンジョが近づいたと思ったら、ハニの持っている浮き輪を取り上げてシートの上にポンと投げた。
「ダメ・・・・・命の浮き輪だから。」
「あんなのがあると、余計に頼って泳げないんだ。さぁ、行くぞ。」
「お兄ちゃん、僕も~」
兄が大好きなウンジョは、二人に付いて行こうとして走り出した時にグミに引っ張られた。
「ウンジョ、あなたは泳げるでしょ。ママたちと砂浜で遊んでいましょ。」
「え~っ。」
「ウンジョ、ほらパパを砂に埋めてくれないか?」
大好きな兄をハニに捕られて不満気味のウンジョは、渋々と大人たちのそばに来て、ブツブツと言いながら砂を集めていた。
「え~こんなに深い所は・・・浮き輪が無いと・・・・・・」
「いいから・・・・ほらオレの腕に捉まれ。人間は絶対に浮くのだから大丈夫だ。」
ハニは恐る恐るスンジョの腕に捉まるが、足を浮かせる事が出来ない。
「怖い・・・・・・・・」
「大丈夫だ。ほら、オレが支えてやるから足を上げろ。オレの腰に手を廻せばいいから。」
少し恥じらいながらそっとハニはスンジョの腰に手を廻した。
一枚Tシャツを着ているとはいえ、男の子の腰に手を廻した事がないハニは、心臓が高鳴り余計に力が入った。
スンジョは華奢なハニのお腹を手で支えると、柔らかな女の子の感触に今まで感じた事のない戸惑いを覚えた。
ワンピースの水着とはいえ薄い布が一枚だけ。
初めて触れる女の子の身体に、妙に緊張している自分自身にスンジョは戸惑った。
ハニはスンジョに支えられながら、バタバタと夢中で足を動かして行くうちに最初の恐怖も薄れて行った。
何とか水に慣れた頃、スンジョはハニのお腹を支えている手をそっと離した。
ハニは一生懸命にスンジョに言われた通りに足を動かし、支えている手が離れた事も気が付かないでいた。
「よく出来たな、オレが手を離しても大丈夫みたいだな。」
ハニはスンジョに言われるままずっと水面に顔を付けたり上げたりしながら、バタ足をしていた。
「怖くないよ・・・スンジョ君・・・・怖くない。やっぱりスンジョ君は天才だね。」
「こんな事、天才じゃなくたって出来るさ。ちょっと上がって休憩しようか。」
スンジョに手を引かれながら、ハニは浜辺に上がった。
「こっちの方がいい。向こうは陽射しが強すぎるからこの岩陰で休もう。」
大人たちのいる所からは死角になっている岩陰。
砂の上に座るのが嫌な様子のハニを見て、スンジョは自分の着ているTシャツを脱いで、そこにハニを座らせた。
「ここで待ってろ。何か飲み物をお袋たちの所に行って持って来るから。」
ハニを残してスンジョは親たちのいるテントまで走って行った
「か~の女!」
掛けられた声のする方を振り向くと、遊び人風の若い男3人がニヤニヤと笑いながら近づいて来た。
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