スンジョの戸惑い 127
「頑張りなさい。」
そう言いながらスンジョの傍から立ち去る父の後姿が、悲しそうに見えた事がスンジョは申し訳なく思った。
自分の進む路を見つけるまでは、父の思うとおりに会社を継ぐことが当たり前だと思っていたし、一時進む路に付いて悩んでいた時も、大学を出てから暫くどこかの企業に就職して父の会社に入るつもりもあった。
「おじさん・・・許してくれたね。」
「ああ・・・・・」
「スンジョ君はお医者様を目指して勉強して・・・・・・そう言えばミナは漫画学科に進んで卒業後は漫画家になると言っていたし、それと、ジュリは・・・・・大学に行くのが難しいんだって。パランの推薦も危ないて・・・・・」
人の事ばかり話をしているハニの頬を、スンジョは引っ張った。
「痛いよぉー。何でホッペを引っ張るの?」
「お前だって成績に余裕はないだろう。お前は自分の事はどうするんだ?」
大きくため息を吐いてハニは俯いた。
「そうなんだよね・・・・・・・ギリギリの所なんだ・・・・・・ガイン先生が何とか推薦が通るように、手を打ってくれているんだけど・・・・・スンジョ君に立派な事を言ったんだけど、自分が何をやりたいのかも判らないの。スンジョ君の傍にいる事しか考えていなかったから。」
オレの傍か・・・・・
ハニはいつだってオレの傍にいてくれる。
だけど、そんなハニに、オレ自身が甘えている気もしないではない。
「スンジョ君と一緒に女医さんになるのも・・・」
ギュッとスンジョがハニのほっぺたを抓った。
「それだけは止めてくれ。」
「そうだよね・・・・私が医者になったら冷静で的確な判断が出来ないよね。」
「ハニが行く道が判らなかったら、大学に行ってからでもいいんじゃないか?簡単に決めるものじゃないから。」
ハニがオレの傍にいたいなら・・・・オレはハニが傍にいれば何でも出来そうな気持になる。
ずっと傍にいてくれるのなら、オレはこんな風に穏やかな気持ちになるのだろうな。
怒ったり泣いたり笑ったりを簡単に出来てしまうハニ。
いつもオレが何でも出来ると言っているけど、オレに欠けているのは何なのか知っているのか?お前はその優しい性格を生かせる仕事に付けばいいのじゃないかな?
温かい笑顔で人を和ませる。
だけどそれを見つけるのはハニ自身だから。
待ってるよ、お前が自分で進む路を見つけるまで。
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