スンジョの戸惑い 128

夏休み明けになると、さすがに1クラスは誰も話をしないで受験色に染まり、どの面々も話しかける事が出来ない程だった。

授業も1クラスにしたら消化授業で、其々が希望する大学に合格するための勉強をしていた。

ただ変わらず、一人だけマイペースに本を読んでいた。

その人物にしたら、それはいつもの光景だが、それでも読んでいる本はさすがに受験とは関係ないものではなかった。

「スンジョ、お前は随分と余裕だなぁ。」

誰もがスンジョにそう声をかける。

そんな言い方をするヤツとは、言葉も交わしたくない。

出来て当たり前で、悩むなどない様に見え、努力しなくても勉強ができる完璧なスンジョの悩みなど誰も知らない。

人並みに成績を気にして勉強をした事も、何度も繰り返し公式や単語を覚えた事もない。

だからと言って、勉強を全くしていなかったわけでもなく、一度で頭に記憶する事が出来るのは、その事だけに集中が出来るからだった。

でも、どんなに努力をしても出来なかったのは、将来の夢を見た事が無かった。

ようやく見つけた夢も、きっかけを作ってくれたハニがいなかったらきっとオレは息をする事さえ忘れていたかもしれない。

人に合わせることが出来ないオレに、ハニは合わせてくれた。

先に歩くオレを後から追い掛けて並んで、また先にオレが行く。

オレの周りを人が取り囲んでも、ハニはオレを見つけてまたオレに合わせて歩いて来る。

いつもそうしてオレに合わせてくれていたから、夢を見つけたオレは今度はハニを待っていてあげよう。

スンジョは勢いよく立ち上がった、

消化授業とはいえ、自習をしている生徒と教壇の椅子に座っている教師は、スンジョが立ち上がった事に驚いた顔をした。

「気晴らしに行って来ます。」

教師は呆気にとられ、スンジョが教室を出るまでバカみたいに口を開けていた。

「・・・ま・・・・良いだろう・・・・・授業時間もあと数分だ。休憩を取る者は取ってもいいから。」

校舎の裏山に向かってスンジョは歩いた。

そんなスンジョの姿をハニは見つけて、窓から顔を向けていた。

ハニの視線を感じたスンジョは、ハニの方に手で後から裏山に来るように合図を送った。

裏山のベンチに腰掛けて、空に浮かぶ雲をただぼんやりと眺める。

一つ一つの雲は全く違った形をして、少しづつその形をまた変えて行く。

そんな当たり前の事を、何も考えずに見ているのもいいものだと、そんな風に思えるのもハニと出逢ってからだ。

ハニは一つ一つに大したことではなくても、大袈裟に感動をしている。

その気持ちが判るような判らないような、自分に欠けているものをハニが持っている。

素直になる事。

ハニがオレに医者になるという夢を教えてくれたのなら、オレもハニの夢を教えてあげてもいいかも。

授業の終了のチャイムが鳴って暫くするとハニが走って来た。

「お待たせ~。」

明るい子共みたいに純粋なハニの笑顔。

あまり見ていたからなのか、恥ずかしそうに顔を赤くした。

「お前の夢・・・・・直ぐに気が付くんじゃないか?」

キョトンとスンジョの顔をハニは見た。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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