スンジョの戸惑い 133
普段は自分の事や、まして他人(ひと)の事になど全く興味もないスンジョだったが、今日は朝からハニ以上に気持ちが落ち着かなかった。
平然として顔色を変えないではいるが、心の中では祈る気持ちだった。
リビングの方が賑やかなのに気が付いて、立ち上がりドア越しに様子を伺った。
「はい、はい、ありがとうございます。」
ハニのその言葉が終わると、グミとハニの歓声が聞こえて来た。
ハニの内部推薦が通ったのだと思った。
他人事なのに、自分までハニの喜んだ声を聞いていると嬉しくなって来た。
「良かったなハニ。」
自分が勉強を頑張らないからだとか、今まで何を学校でやって来たんだ。
バカだとか小学校に戻れだとか散々言って来たが、ハニなりに頑張っていた事は知っている。
ハニの顔を見てくるか。
スンジョは、ひとつふたつ咳払いをして顔を無表情にしていつもの自分に戻した。
「五月蝿いなぁ・・・本に集中出来ないだろう。」
スンジョの声にハニが振り向くと、涙でグシャグシャな顔で笑いながら、今かかって来た電話の報告をした。
「スンジョ君、今ね大学から連絡があって合格したの。」
「良かったな。」
コクンコクンと頷くハニの横を通り過ぎると、オレが何かを言ってくれるのを期待している事がわかる。
「合格しただけで終わりじゃ無いぞ。入ってからは、自分で単位をしっかり取っていないと後悔する事になる。」
オレらしく、ハニにお祝いを言ったつもりだ。
「何それ。お兄ちゃん、彼女ならもっと違うお祝いでしょ!」
お袋は、何をオレに期待していたのか解るが、間違ってもお袋の前では見せるわけがない。
お袋のいない所でオレらしいお祝いはしてやるのだから。
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