スンジョの戸惑い 134
ハニの内部推薦合格の通知が来た日の夕食は、ハニとグミの賑やかな声が一段と賑やかだった。
「ハニちゃん、合格のお祝いは何がいいかしら?」
「奥さん、気持ちだけでいいですよ。な?ハニ。」
「はい、おばさんが美味しいご飯を作ってくれたおかげ何ですから。」
ハニは何がして欲しいと言う性格じゃない事は、この家にいる人たちは知っている。
「そう?ハニちゃんはいずれ家の娘になるのだから・・・・・そうだ!スンジョ、あなたはハニちゃんに何をお祝いするの?」
夕食の間も無言で、冷めた顔で食事をしているスンジョにグミは聞いてきた。
「考えてない。」
「まっ!ハニちゃんはスンジョのお嫁さんになる子よ。」
親のグミにも冷たい視線で返すスンジョ。
グミはそんなスンジョから、一歩も引く事はしない。
「まだ高校生だ。結婚なんて考えるか。」
判ってはいるがスンジョのその言葉にズキッとハニはした。
夕食後の団欒も終わり、ハニはバルコニーから外の景色を眺めて、心配していた内部推薦の合格の連絡をもらった事を何度も思い出しては笑っていた。
「暇か?」
「スンジョ君・・・・・」
「涼みに散歩しないか?」
「え?だって・・・・夜だよ。」
シッと指を口の前に持って行き、ハニの手を取って静かに階段の下を覗いた。
大人たちはウッドテラスで飲んでいた。
「静かに来いよ。ウンジョは寝ているから、誰も二階には来ないから。」
抜き足差し足で音をたてないように、玄関から門には行かずに裏庭に廻り勝手口から外に二人は出た。
「スンジョ君って・・・・こんなことする人だったの?」
「お前はオレが聖人君子だとでも思っていたのか?魔性のスンジョを知らないのか?」
ニヤッと笑って勝手口の階段を二人は降りて行った。
誰も歩いていない住宅街の道をスンジョはハニの手をしっかりと握って、町が眼下に見渡せる小高い所に有る見晴らし台に連れて行った。
「ねえ・・・帰ろうよ。夜に家を出るのはいけないよ。」
スンジョはハニをベンチに腰掛けさせて、持っていた封筒を差し出した。
「何?・・・・・パラン大学?・・・・・私に?・・・・・特別奨学生内部推薦合格通知?私じゃないよ・・・・だって・・・繰上げだし・・医学・えっ?えーっ!!!」
スンジョから受け取った合格通知をハニは何度も見ては、街灯に照らしたり透かしたりして見た。
「ずっと誘われていたんだ。パランのどこの学部でもいいから来てほしいって。テハンや他の大学からも誘われたけど・・・・・・行くならハニと一緒の大学の方が楽しいかなって・・・・・・」
「何で?何で?スンジョ君だったらテハン大の医学部に行かないと・・・・だって天才スンジョ君がパランじゃ・・・・・」
「大学を偏差値で選ぶつもりはなかった。テハンは魅力ある大学とも思えないし、楽しく学校生活を送るって言っているお前を見ていて、それもいいんじゃないかなってさ・・・・・・・お前と違ってオレは、選ぶのが有り過ぎて面倒だったから、またお前と同じ学校でもいいと思ったんだ。」
「おじさんたちは知っているの?」
「お前に一番に教えたかったし、オレがどこの大学に行っても跡を継ぐのじゃないなら何も言わないさ。ウンジョなら親父と同じテハンを余裕で受かる頭は有るから。」
「すごい自信・・・・・」
ポカンと驚いているハニの顔を覗き込むように、スンジョは顔を近づけてニヤリと笑った。
「な・・・・・な・・・なに?」
「これがお前にオレからのプレゼントだ。目を閉じろよ。」
パチンとハニは目を閉じると、スンジョの唇がハニの唇に触れた。
最初のキスは軽く触れただけの、子供っぽいキスから、頭がクラクラしそうな大人の様なキスをスンジョはしてくれた。
ユックリ顔を離すと、息をするのも忘れているハニは、目を開ける事も出来ず動く事も出来なかった。
そんなハニの柔らかな頬をスンジョはキュッとつねった。
「・・・・・痛い・・・・・・・」
ハニの心臓は飛び出しそうなくらいに激しく打っていた。
「スンジョ君・・・・・・・なに?いつ・・・・こんなキス覚えたの?」
「オレは天才だぞ。何でも知っているし、魔性のスンジョだと言っただろ?オレが知らなかった事は、たった一つだ。」
「一つ?」
「お前への本当の気持ちだ。」
「本当の気持ちって何?」
「お前が自分の進む路を見つけたら教えるよ。」
0コメント