スンジョの戸惑い 137
「温泉行きたいなんて、お前って・・・結構おばさんなんだな。」
「そうかな・・・・・寒い時には身体を温まるし、ここのお湯はね・・・・お肌がピッカピッカになるんだって。」
行く事を決めた温泉のパンフレットをスンジョに渡して、ハニは嬉しそうにしていた。
なぜこの温泉にしたのかスンジョには判らなかった。
有名な温泉でもなく、家族連れで行っても周囲には何もない温泉地。
パソコンで検索しても、周囲には観光する場所もない。
いわゆる、湯治場かまるで有名人のお忍びで行く場所のようだった。
「ここね、おばさんとおじさんの思い出の場所なんだって。」
「思い出ね・・・・・オレは聞いた事がないけどな。」
湯治場が親父たちの思い出の場所ね・・・・・・・
「ここの星屑湯ってどんなんだろう・・・・・」
「冬の澄んだ夜空に浮かぶ星が、国内一の場所って書いて有るぞ。」
「ワァー、行きたいな・・・・ねぇねぇっスンジョ君、この星屑湯に行こうね?」
返事が出来ないだろう・・・・・・このお湯の効能をお前は見たのか?
効能どころか、おじさんが聞いたら・・・・・怒るぞ。
ハニはこの星屑という名前だけで、喜んでいるだけなのだろう。
事実、ハニはこの星屑という名前で、すでに頭の中は旅行の事で一杯だった。
スキップしながら、旅行の準備をしようとスンジョの部屋を出て、今すぐにでも行くつもりなのか自分の部屋で荷物をまとめに行った。
「この服って、スンジョ君が可愛いって言ってくれたのよね、持って行かないと。それと下着もイチゴ柄やクマの下着だと、見えた時に子供っぽいわよね。この間、ミナたちと買った勝負下着を持って行かないと・・・・・・・んん?勝負下着って・・・・何を勝負するのだろう?・・・・・旅行と言ったら夜はトランプよね・・・・・・そっかぁ、トランプで負けたら服を脱いで行くための下着なんだ。」
ハニは派手なピンクの下着を外バックの中に忍ばせた。
旅行当日、世の中の高校生はまだ受験の真っ最中。
既に進路が決まり、学校に登校しないハニは気が楽になった。
「ねぇ、ママァ・・・・・・・どうして学校休んだのに、こんな辺鄙(へんぴ)な所に来たんだよ。学校休むくらいだから海外かと思ってたのに・・・・・・・」
「いいのよ、ここで・・・・・ねぇパパ?それにギドンおじさんが、店が終わってから合流するからあまり遠くには行けないの。」
スチャンもグミに何も言わずただ笑っているだけだった。
「ここはね、ママとパパとそして・・・・・・お兄ちゃんのお思い出の場所なの・・・・」
「パパとママとお兄ちゃんの思い出の場所?」
「オレ、来た事がないぞ。」
「ふふ・・・・・いいのよ。来た事が有るのよ、今夜教えてあげるわね、お兄ちゃんの思い出の話を!」
妙に引っかかるような言い方のグミに、スンジョはまたグミが何か企んでいる事に身震いして来た。
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