スンジョの戸惑い 138
古い・・・・古いっていうのか・・・ボロ過ぎだ。
「趣のある宿でしょ?『星屑の宿』って言う名前だけど、別名・・・・・『天使が舞い降りる宿』って言うのよ。素敵でしょ?」
趣ねぇ・・・・・・天使が舞い降りる?・・・・何だよ。それをハニに願ってるのか?
「おばさん・・・天使じゃなくて・・・お化けが出るんじゃないですよね?」
暗い所とお化けが大嫌いと言っていたハニは、建物の外観を見て身体をブルッと震わせていた。
「大丈夫よ、お化けなんて出ないわよ・・・・サッ、おじさんが荷物を運んでいる間にチェックインしてくるわね。」
両親がたまに日帰りでこの温泉に来ていたのは知っていたが、オレも知っているって・・・・・親父と結婚前に来たのがこのボロイ宿か?オレ達にも同じ運命にさせようっていう考えか?
お袋はあの頃は今のオレ達と同じ歳だったが、親父は生活能力のある年齢だ。
ハニが気が付いていなくて助かるが、何か起きそうな気がする。
「はい、スンジョ。あなた達の部屋の鍵よ。」
「あなた達?どういう意味だよ。」
「この部屋はとてもいい事が起きる部屋なの・・・・・ハニちゃんに優しくしてあげてね!」
「はぁ?何を言っているんだよ。普通の親は、そんな事を言わないだろう。」
ウンジョと二人でロビーの水槽を眺めているハニには聞こえていないが、この母親のバカげた考えが解らない。
「だって私は普通の母親じゃないもの、あなたもそう思っているでしょ?あっと・・・私の見ているのが間違っていなければ、ハニちゃんの周期はピッタリ28日よ。今日・明日なら必ず女の子よ。」
全くこの母親には呆れて何も言えない。
この母親が自分を産んだ親だとは思いたくもない。
オレ達はまだ付き合い始めたばかりで、高校生の・・・・もうすぐ大学生になるが、息子と親父の親友の娘に、何が何でも自分の夢を押し付けるなよ。
「ママ、荷物を持って来たよ。ん?スンジョ、何か機嫌が悪そうだね、どうかしたのか?」
「別に・・・・・・」
全く親父がこんなんだからお袋がとんでもない事をしでかすんだよ。
「スンジョったらね、今夜の事が心配みたいなの。」
「おい!勝手なことを言うな!」
「スンジョ、ママに<おい!>なんて言ったらだめだよ。ママも、心配かもしれないけど、スンジョなら大丈夫だよ。何でも完璧に出来るんだから。」
解ってないな。
親父がそんな風にお袋を甘やかすから、ハチャメチャなことを思いつくんだ。
解ってるよ、ここがオレの思い出の場所って何なのか。
だけど、そんな事知るわけもないし・・・・・あ~オレはいつまでこの母親にいい様にされるんだろう。
お袋の思惑通りになったら、最悪だ!
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