スンジョの戸惑い 144
湯から上がり部屋に入ると、ハニはベッドに入って目を瞑っていた。
「おい、起きてるんだろう?」
真っ直ぐ上を向いて、口をキュッと結んだまま、まだ目を瞑っている。
スンジョはニヤリと笑った。
「広いベッドを半分空けているのなら、オレと一緒に寝るのか?」
ビクンとハニが動いた。
スンジョは、掛け布団をそっと開けて、ハニの身体の傍に手を付いた。
顔を静かに近づけて行くと、目をギュッと力を入れた。
「起きているの・・・・・知っているぞ。」
そっと閉じていた目を開けて、上目づかいにスンジョを見上げた。
「いつから知ってたの?」
「部屋に入ってから。寝相の悪いハニが行儀よくしていたからな。」
寝相の悪い?部屋を覗いたの?
「部屋は覗いていないけど、たまに寝癖が酷い時があるからな。」
「スンジョ君は天才だから、私の心も判るの?」
クスッとスンジョは笑ってハニのオデコを突いた。
「バ~カ、お前は時々思っている事を口から出している。」
スンジョはニヤッと笑って、ハニの横に入りベッドサイドに置いてあるリモコンで天井灯を消した。
「パパ、パパ、お兄ちゃん達の部屋の電気が消えたわ・・・・・」
「ママ、よしなさい。ウンジョの教育によくないよ、覗きは・・・・」
スチャンの言葉が耳に入らないのか、双眼鏡から離れようとしない。
「あ~ぁ、10ヶ月後には可愛い女の子が・・・・・・・パパったらぁ~」
グミが振り向くとスチャンはウンジョの耳を塞いでいた。
「ママァ、双眼鏡で覗いたらダメでしょう。スンジョは高校生だけど分別はあるよ。
テンションがMAXになっているグミにはスチャンの言葉など耳に入らず、双眼鏡でスンジョ達の部屋を見ていた。
ベッドで寝転んで天井を見ているハニは、夢の中にいるのかウットリとした目をしていた。
「素敵・・・・・こんなの初めて・・・・・・・言葉が思い浮かばない・・・・・。」
「冬の空は空気が冷たくて澄んでいるから、星が綺麗に見えるんだ。」
星の輝きのようにハニの瞳はキラキラと揺らめいていた。
「星屑湯って・・・・・・こんなに綺麗に星が降って来るように見えるから付いたんだね。」
大きな欠伸をしたハニは、不意にスンジョの方を向いて聞いて来た。
「ねぇ・・・・・・・スンジョ君。」
「何だよ。」
「何もしない?」
「何かして欲しいのか?」
「そうじゃなくて・・・・・・・・いいよ・・・・・ベッド広すぎるから、半分だけいいよ。」
ソファーに寝ているスンジョは、ベッドの向こう側のハニの方を向いた。
「寒いでしょ?私も広いベッドで淋しくて寒くて・・・・・・」
スンジョが起き上がると、ソファーのスプリングの軋む音で驚いてハニは飛び起きた。
「でも・・・・ここまでよ・・・・・・1cmも出たらだめだよ・・・・・」
「判ってるよ。」
ハニの隣にスンジョは横になると、腕を頭の下に入れて天井を見た。
何もしないと言ったスンジョが、本当に横に来ただけで安心したのか、ハニはすぐに寝息を立てて眠ってしまった。
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