スンジョの戸惑い 148
「痛いよ・・・・どうして腕を引っ張るのよ・・・・・」
スンジョはハニの腕を引っ張り、離れの星屑湯の部屋まで連れて行った。
朝食を食べていてもお袋の話しに乗せられて、言わなくてもいい事を言って、完全に思い込まれてしまうだろう。
「おい!」
ハニの掴んでいた手を離して、スンジョは振り向いた。
ただオレが好きでオレの傍にいるだけでも嬉しそうに見ているハニの笑顔を見ると、怒れていても怒りが静まって行く。
ハニに言っても仕方がないな。
下手なことを言えば、余計にハニは言わなくてもいい事を言ってしまう。
「スンジョ君・・・・何を怒っているの?おばさんがあんなに楽しそうにしているのを見ると、温泉に来てよかったねって思わない?毎日、私たちの世話をしてくださるから疲れているものね。これからも時々ここに来て、おばさんやおじさんと家のパパをリサイクルさせてあげようね?」
「おい、リサイクル?それを言うならリフレッシュじゃないか!」
「そうだった・・・・・・」
どうしてこいつは言葉をこうも言い間違えるんだ?
そんな風に頭が廻るのなら、お袋がどう言ったらこう出るのか、いい加減に気が付けよな。
「ハニはオレがいない時にはお袋と話すなよ。」
「焼きもちを妬いているんでしょう?」
「バカか!お袋取とオレのどっちの言う事とを聞くんだ。あのお袋が暴走したら止まらない事くらいいい加減に判れよ。」
バカと言えばハニが怒る事くらい判っているのに、つい言ってしまう。
「自分が天才だからスンジョ君は何かあると私の事をバカって言うのよね!おばさんとスンジョ君のどちらの言う事を聞くのかなんて、よく天才が言えるわよね。おばさんはスンジョ君のお母さんでしょ?私には一緒に話をしてくれたり、美味しい物を作ってくれたりしてくれるお母さんがいないから、スンジョ君のお母さんの方の言う事を聞くに決まっているでしょ?」
当たり前と言えば当たり前のハニの言い方。
だけど、ハニとオレを自分の掌で転がす様にいろいろ企てているお袋にはオレ逆らいたくなる。
何とかハニをオレの方に付けるにはどうしたらいいのか・・・
「そうか、そうか判ったよ。お前はオレの事を好きだとか言っていたけど、お袋と話をしたり美味い物を作るから好きなんだ。それだけの事か。」
「違うよ、スンジョ君の事は・・・・・」
ハニを無視するように、本を手に取り窓側の椅子に座って読み始めた。
見ていなくても判る、ハニの今にも泣きそうな顔が。
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