スンジョの戸惑い 150

「スンジョ君!」

「何をやっているんだよ。服を着て温泉で泳ぐ練習か?・・・・・怪我をしたのか?肘から血が出ているぞ。」

温泉の湯で体が温まっているため、擦り傷でも思った以上に出血している量が多い。

「どうしよう!こんなに血が出て・・・・」

「血流が良くなっているからな。そこにあるベンチに行くぞ。ウォータークーラーがあるからあの水で傷口を洗って冷やそう。歩けるな?」

スンジョに怪我をした手を頭よりも高く上にあげられ、身体を支えられて自分が行こうとしていたベンチまで歩いた。

「足が滑って中に落ちたの。」

ウォータークーラーの冷水で傷口を洗うと、思った通り大した怪我でもなく、ただの擦り傷だった事にスンジョは安心した。

「どれだけ湯に近い縁を歩いていたんだよ。湯の中に甘い物でも落ちていたのか?」

プーッとむくれたハニを見たかった。

自分がちょっとだけグミと仲良くしているハニにイライラして、無視して本を読んでいる時に怪我をさせてしまった事に後悔していた。

それがスンジョはグミに嫉妬していた事、悪かったと思っている事に対する反省している気持だとは気が付いていなかった。

それでも、血が止まり安心してベンチの背にもたれ、空を見上げているハニの顔を見ると、妙な気持ちになっていた。

この場所が静かで誰もいないという事、白いハニの服が濡れて、勝負下着だと言っていた派手な下着がくっきりと見えていると、自分らしくなく気持ちが落ち着かなかった。

「この湯の中にキラキラした物を見つけて歩いたの。その時に、どこまで続いているのかなぁって思ったら、一番奥のこの二人掛けのベンチが見えて気が緩んじゃって・・・・」

「お前って本当にバカだな。そんな縁を歩かなくったって行けるだろう。」

見廻せば奥のベンチまで行ける歩道が整備されていた。

湯船から離れていて、その通路までは濡れないようになっている。

「あっ!本当だ・・・・・全然気が付かなかった。」

「それとこの下に埋め込まれている鉱石は、星屑湯と表している通り、上を見上げた時間と同じように星を表している。夜は星が見えるが昼間は星を見る事が出来ないから、底面を空に見立てて鉱石を埋め込んだ。」

「すごいね・・・スンジョ君って何でも知っているんだ・・・」

スンジョの説明に感心した顔で見ているハニは、尊敬するような眼差しを向けていた。

「お前が旅行に行きたいって言っていた時に、持って来たパンフレットにしっかりと書いてあったぞ。」

「見てなかった・・・・」

「ほら、このベンチから座って向こうを見ろよ。」

スンジョが指を指した方を見ると、水面(みずも)が風で揺らめいて、底面の石と違った光を見せていた。

「綺麗・・・・・本当に星みたい・・・・ううん、宝石みたい。」

「ここが子宝の湯というのは、湯の効能だけではないんだ。こんな風に二人で静かな時間を過ごしていると、アドレナリンが分泌され・・・・交感神経が興奮した状態、すなわち「闘争か逃走か」(fight-or-flight)」のホルモンと呼ばれる。動物が敵から身を守る、あるいは獲物を捕食する必要に迫られるなどといった状態に相当するストレス応答を、全身の器官に引き起こすんだ。曖昧さ回避・・とも言われ・・・・・」

急にハニはスンジョの顔を睨んだ。

「なんだよ・・・」

「獲物を捕食する必要に迫られる?スンジョ君・・・・・・変な事を考えているの?何もしないって言ったのに・・・・・」

「お前を襲そうかよ。だけど、勝負下着を付けているんだろ?ハニがそうしてほしいのなら、オレはお前に恥はかかせないよ。」

スンジョが顔をハニに近づけると、ハニは目を静かに閉じた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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