スンジョの戸惑い 152
この宿に来て二日目の夜。
前日はギドンが遅い時間に来たので、全員揃って初めての夕食を摂る事になった。
グミの陰謀で、スンジョはハニとほとんど部屋に籠りっきり。
星屑湯は山間部にある温泉宿だから、観光をする場所でもなく湯治場として栄えた場所だった。
ここに来てからずっと気になった事があったが、誰もそれを口に出さなかった。
「スンジョ君・・・・・いいのかねぇ・・・・ハニと一緒の部屋で。」
「ギドンさん、二人はいずれ結婚するのですから、何か有ったらスンジョが責任を取りますから。」
何か有ったら・・・・お袋は何か有ってほしいんだろ。
「この先オレ達はどうなるか判りませんが、おじさんに迷惑はかけませんから。」
「そ・・・そうかね・・・・・」
グミはスンジョが言った言葉に、さりげなく反論をしてみた。
スンジョの反論にもグミのパワーは小さくなるどころか大きくなっている。
「スンジョ、先がどうなるのか判らないってそんな卑怯な事を言ってもいいのかしら?」
「どういう意味だよ。」
ピキッとスンジョの神経の切れる音が聞こえるような、尖った棘のある言い方にハニはスンジョの顔を眺めた。
「スンジョ君・・・・・食事中だから怒らないで。」
「怒らないさ、怒らないけどオレが卑怯ってどういう事だよ。」
グミは隣に座っているウンジョを引き寄せて耳を塞いだ。
「ハニちゃんに渡した物を使ったの?使わなかったの?」
あぁ・・・・アレの事か・・・・・・
「使わなかった。」
そうさ使っていない、アレは捨てたのだから。
だけどこれを言ったら、またオレの思いとは違った事をしようとする。
「別に、使わなくったって絶対にお袋が思うような展開になるとは限らないだろう。オレは天才だ、失敗はしないから。」
何をスンジョとグミが言っているのか、耳を塞がれているウンジョは判らないが、ギドンとスチャンもさっぱりわからなかった。
スンジョの顔が怒り爆発しそうな雰囲気になって来ると、いつも鈍感なハニの頭が今日は冴えていた。
「スンジョ君ってね、四字熟語っていう別名があるの。」
「ほぅ・・・・どんな四字熟語がスンジョに当てはまるのかね?ハニちゃん。」
ハニが話し始めた事で、ウンジョはグミの手を離して自分もその中に加わっていた。
「眉目秀麗・完全無欠・無表情男・無感情男・冷徹人間ってね、言われているんです。」
一瞬静まり返ったその場が、すぐにハニの言った言葉を聞いて大爆笑になった。
「おい!最後のみっつはなんだよ!」
言った言葉を思い出してハニは顔を赤くして口を押えた。
言った事は取り消せないが、ハニのそのかわいすぎる様子にスンジョは苦笑いをした。
「ところでさ、親父・・・・・・聞いてもいいか?」
「何かな?パパに判る事かな?」
「多分・・・・・・・この宿って誰も客がいないけど・・・・湯治場なら他にも客がいてもおかしくないと思うけど。」
スチャンはチラッとグミを見てから、もじもじとして小さな声で言った。
「買ったんだ・・・・・・」
「買った?」
「ここはママとパパがその・・・・初めて二人で泊まって・・・そのあとにスンジョが出来た事が判った記念の宿で・・・・・・・ママが欲しいって言ったから買ったんだ。」
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