スンジョの戸惑い 155
星屑湯への旅行から帰って来て、気が付けばもう二ケ月が過ぎた。
それぞれ希望する大学に決まった人、希望ではないが入学する大学が決まった人、来年またチャレンジする人との別れの卒業式が来た。
オレは卒業生代表として壇上に上がる事になった。
「スンジョ君・・・・これ・・・・お守り。」
「随分不恰好だな。」
「私が作ったの。星屑湯の記念の物を入れて。」
記念の物・・・・・お袋が微妙にその言葉に反応をした。
「なんだよ、何が入っているんだ?」
グミはされげなく二人に近づいてくる。
「ひ・み・つ!卒業式での卒業生代表の挨拶が無事に終わりますようにって・・・作ったから、式典が終ったら開けてね!」
ハニはそう言うと、高校最後の日を迎えて嬉しくて仕方がないように飛び跳ねるようにして走って行った。
スンジョの後ろから覗き込みようにそのお守りに興味を示しているグミを一睨みして、スンジョも玄関から出ていったハニの後を追った。
広い講堂とはいえ卒業生・在校生に卒業生の保護者たちで、息苦しくなりそうだ。
「ハニ・・・・ハニ・・・・・顔色が悪いよ。」
「・・う・・・ん・・さっきから気持ち悪くて・・・・吐きそう・・・・・・」
「大丈夫?」
「・・・ダメ・・・・保健室に・・・・・・」
「もうすぐペク・スンジョの挨拶があるよ。」
「無理・・・・・」
ハニはミナとジュリに付き添ってもらい保健室に向かった。
当然その様子をグミは、来賓の挨拶を聞いている振りをしてしっかりと見ていた。
<やったわ!お兄ちゃんとハニちゃんも私と同じ道を歩くのね。>
グミは膝の上で、小さくガッツポーズをしていた。
「ハニ・・・・大丈夫?」
「うん、吐いたらちょっとよくなった。」
「ねぇ・・・・あんた・・もしかしてデキたの?あんたたち付き合ってるし、部屋も隣同士だから・・・・」
「家では・・・・また吐きそう・・・・・・」
保健室に向かうまで、何度もハニはトイレに駆け込んで吐いた。
「家ではって・・・・・旅行に行ったとき?」
「かも・・・・・おばさんからアレをもらったんだけど・・・・・全部使ったみたい・・・」
「凄い!」
ミナとジュリは保健室の養護の先生にハニを頼んで、また卒業式式典を行っている講堂に戻った。
卒業式が終わって、ミナ達からハニが気分が悪くなって保健室で休んでいる事を聞いたスンジョは、1クラスの友人と挨拶をササッと済ませて保健室まで迎えに行った。
静かにドアを開けて中に入り、ベッドの上で眠っているハニを見て、顔色が幾分かは良くなっている事にホッとした。
「ペク・スンジョ君、オ・ハニさんから聞いたんだけど・・・・・・・妊娠したって・・・・ここでは話だけだから、病院に行って見てもらって。微熱もあるみたいだし、きっと間違いがないわ。」
「妊娠ですか?まさか!」
「あなたは天才で完璧だからそういう事は、ちゃんと対策を取っていると思ったんですけどね。大学にも行かないといけないし大丈夫?」
まるでスンジョが悪いかのような言い方をする先生に多少ムッとしたが、勘違いしているハニの為にも本当の事を言わないといけないと思った。
「先生・・・オレ達、実は・・・・・・」
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