スンジョの戸惑い 159
最近親父の顔色が良くない。
時々、胸を押さえているし、少し歩くだけで息切れもしている。
「ねえスンジョ。医者にはどうしてもなりたいの?」
「ああ、なりたい。」
「そうよね。あなたが初めて気になった事だものね。」
お袋も何かあるのか、いつもと比べると元気がない。
賑やかにいつも五月蝿いくらいに喋っていたお袋が、こんなにも元気がないのは初めてだ。
「何かあったのか?」
「パパの具合がよくないみたいなの・・・・・・・」
「よくないって?」
「言わないんだけどね・・・・・薬なんて飲まない人が、最近いつも水を持って仕事に行くのよ。」
親が病気になるなんて考えた事がなかった。
親父はいつもお袋の後ろにいて、何も言わないでニコニコと笑ってオレ達を見ていた。
お袋にしたって親父が元気だったから、飛び回ってオレ達の事を世話していてくれた。
「何の薬を飲んでいるんだ?」
家族に心配かけないようにしている親父だから、何の薬を飲んでいるかなんて判るはずがない。
「これ・・・・飲み終わった薬の袋だけど、スンジョに判る?」
グミがポケットから薬の袋を出してスンジョに見せた。
「狭心症に使われるニトログリセリン錠・・・・・これは判るよな?発作が起きた時に使う舌下型の薬だ。ミニトロテープ・・・・これは体のどこかに貼る薬だ。副作用も少なくて持続性のある薬。」
「判るの?」
「ああ・・・・一般的に使われている薬だからな。」
平気な顔をしていても、いつも笑っていた親父がオレ達に気が付かれないように、平気な顔をしていた事を知ってショックだった。
「お兄ちゃんが医者になるにしても、ウンジョはまだ幼いし・・・・・最近パパは忙しそうで心配だわ。私は会社の事を知らないうえに一度もお勤めをした事がないから・・・・何も分からなくて。」
不安そうにしているお袋の気持ちが分かる。
裕福な家庭で育ち、高校を卒業と同時に親父と結婚をした。
世間の事に疎くても仕方がない。
「オレが親父の会社でバイトをしようか?授業が無い時に、バイトをして親父の様子を見ていようか?」
グミの顔がパッと輝いた。
「本当?そうしてくれると助かるわ。スンジョがそばにいればパパも安心だろうし・・・・・」
それだけでも、グミは嬉しかった。
スチャンが一代で大きくしたとはいえ、何代も続いた玩具メーカーを自分の代で終わらせたら、先代先々代に申し訳ないと思っていた。
「心臓には不安が一番いけない。オレが少しの間でも親父の負担を助ければだいぶ違うと思う。」
本当はアルバイトではなく、グミもスチャンと同じ考えでスンジョに会社を継いで欲しかった。
子供の進路を親が決めてしまってはいけない。
言い出したくても言えない
スンジョに医学部を諦めて経済学部に移って・・・・・と、本当はそう言いたい。
出来ればスンジョが自分自身で見つけた夢を叶えてあげたい気持ちもあった。
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