スンジョの戸惑い 162
「みんなちょっといいか?」
親父に伴われて、オレとハニは開発室に入った。
一斉に視線がオレ達に注がれる。
「息子のスンジョだ。まだ学生で何も分からなくて足手まといになるけど、雑用にでも使ってくれ。」
無理だろう親父。
社長の息子を雑用に使える社員がいるか?
「そして、この子はわしの親友の娘で、オ・ハニちゃん。」
「オ・ハニです。普通の者ですけど、よろしくお願いします。」
普通?それを言うなら不束(ふつつか)だろう。
ったくこいつは間違った事を平気で言えるから凄過ぎだ。
男子社員がハニを見る目が多少は気にはなるが、スンジョはスチャンに付いて社長室に入って行った。
「これがパパの仕事の机だ。書類が増える一方でなかなか減らなくてな。目を通してみるか?」
親父のデスクに座ると、上背のあるオレなら向こうが見えるが、背の低い親父にはものすごい圧迫感があったと思う。
その中で秘書が持って来た書類を一つずつ目を通して、仕分けをして行くのはかなりの負担になっていたはずだ。
「パパは、スンジョと違って見ただけで頭に入らないからなぁ・・・・・全部目を通して気が付くと退社時間を過ぎている事がよくあった。」
「意見を言ってもいい?」
「ああ、勿論いいよ。」
「シーズン制のゲームを作った時のスタッフのままか?」
スチャンとスンジョは社長室から開発室の方を見ていた。
ハニが、書類をひっくり返したり躓いたり転んだりしているのが見える。
「そうだな・・・・信用をしているから、開発室の中での移動はしていなかったな。」
「時代の変化は速いんだ。毎年新卒で何人の社員が来るのか分からないが、若い人材でゲームが好きで、自分で組み換えをしている人や、ゲームが好きではない人を開発室のチームに入れるのもいいかもしれない。」
「ほぅ・・・・・・」
スチャンは自慢の息子が、たった数十分の間に見た会社の様子から感じた意見を感心して聞いていた。
「人事から社員のデータを借りる事は出来ないだろうか。」
「出来るさ・・・・・すぐに持ってこさせるから、ハニちゃんとお昼でも食べて来なさい。早目の今の時間なら社食も空いているから。」」
「そうする・・・・」
社長室を出て開発室に入ると、コピーの使い方の間違いで、何十枚と印刷をして慌てているハニの姿があまりにも可笑しくてスンジョは笑いがこらえきれなかった。
「おい、食事に行くぞ。」
「はい!」
食べる事になると途端にさっきまでのハニと打って変わって生き生きとして来た。
「スンジョさん、私たちもご一緒していいですか?」
女子社員の言葉にチラッとハニを見ると、あからさまに嫌そうな顔をした。
「勿論、いいですよ。」
ふくれっ面のハニの顔を見て、ニヤリと笑った。
0コメント