スンジョの戸惑い 167
ハニはスンジョに頼まれて急いで家に帰った。
長い緩やかな昇り坂を全速力で走っていたからなのだろう、あと少しの所まで走って来たのに息が切れてきた。
一寸だけ休もうと思って顔を上げると、ポストに入れられた郵便物を取りに来たおばさんがこっちを見ていた。
「おばさん・・・・・・・これ、スンジョ君から預かったメモなの。」
「そう・・・・・・ありがとう・・・・」
渡されたメモをすぐに広げると、短い文章に書かれている事が何の事なのか判ったのか、おばさんの手は震えてメモを今にも落としそうになった。。
あたり前だ。
私もスンジョ君に頼まれたからここまで来れたけど、心臓が爆発しそうなくらいドキドキして怖い。
スンジョ君は自分から連絡をするからいいと言っていたけど、電車を待っている間パパに電話をした。
「パパ、おじさんが倒れたの。仕込れが終わったらパラン大病医院まで来て。」
パパは従業員に任せて、出来るだけ早く一度家に帰ると言っていた。
震えているおばさんに付いておじさんの当座に必要な物を用意をする事を手伝う事にした。
「どうしよう・・・・・どうしよう・・・・・あ~私ったら、どこに何があるのかも解らなくなっちゃった・・・・・」
いつもきちんと片付けているのに、笑っているおばさんが涙を流しながらあちこちの引き出しを開けて、探し物をしていると役に立たない私自身が情けなかった。
「ハニや!奥さん!」
パパが玄関を入って来た声で、私はおばさんをその部屋に置いてリビングに出た。
「パパ・・・・・・・おばさんがパニックになって・・・・・」
「そうか、パパに任せなさい。」
パパと一緒におばさんのいる部屋に入った。
「ギドンさん・・・・・・主人が倒れて・・・スンジョがメモを書いてくれたのに・・・・どこに何があるのか・・・・・」
「奥さん、着替えと現在スチャンが飲んでいる薬だけでいいです。後はハニに用意させますから、病院まで私が送って行きます。」
パパがおばさんを連れて病院に行くのを確認して、スンジョ君が書いてくれたメモを見ながら荷物をまとめた。
「ただいま~ママァ~、お腹が空いたよ。」
何も知らないウンジョ君が、いつもの様に小学校から帰って来た。
私がスンジョ君に頼まれた事をしなければ。
「おい!馬鹿オ・ハニ。ママたちの部屋で何してるんだよ。」
今はいつもの様に憎ったらしい言い方をするウンジョ君が可哀想で可哀想で・・・・・
「くっ・・・・苦しいじゃないか、抱き付くならお兄ちゃんだけにしろよ、バカ!」
言わないと・・・言わないと・・・・・スンジョ君に頼まれた事。
「おじさんが、倒れたの・・・・・・」
「何を言ってるんだよ、馬鹿オ・ハニ・・・・・・」
ハニから離れたウンジョは、いつの間にか涙を流しているハニを見て嘘や冗談ではなく、大変な事が起こった事に気が付いた。
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