スンジョの戸惑い 172
二階のスンジョの部屋のドアが、音も立てずに静かにしまった。
ウンジョはダイニングでの兄スンジョとハニの入り込めない光景を見てドキドキとしていた。
二人は好き同士で、大学生の大人だからと、そう思ってもまだ小学生のウンジョには刺激的だった。
ただその光景を見てドキドキしていたのではなく、兄の泣いている姿を見てそれほど兄に負担がかかっている事を知ったから。
お兄ちゃんが泣いていた。
いつも泣かないお兄ちゃんが泣いていた。
長男だから、オレが何とかするって・・・・ママに言っていた。
医者になるのを辞めるのかな・・・・・・・
でも、きっとハニがそれを止めてくれる。
だって、お兄ちゃんはハニの言う事ならきっと聞いてくれるから。
ハニはお兄ちゃんの事がすごく好きで、さっきもギュッとして抱きしめていた。
僕がもっと大きかったら言えるのに。
お兄ちゃんは医者になって、病気の人を助けて。
僕がパパの会社を継ぐから。
だって、ゲームはお兄ちゃんより僕の方が得意だし好きだから。
仕事は好きな事をした方がいいんだ。
って、言いたいけど僕はまだ小学生だから言えない。
眠れず布団の中で考え事をしていると、スンジョが二階に上がって来た足音が聞こえた。
耳を澄ませばハニと何かをしている事が判る。
ドキドキしながら、目をウンジョはギュッと瞑った。
長い沈黙の後、ハニの小さな声にスンジョが一言言っていた。
「お休み・・・・ハニがいるから頑張れそうだ。心配しなくていいから。」
それがどんな意味なのかウンジョには判らなかったが、きっと大丈夫だ心配をしなくていいという事だろうと思った。
スンジョはハニの部屋の前で泣いているハニの顔を優しく包んだ。
「ハニがどうして泣いているんだ?」
「スンジョ君が・・・可哀想で・・・・・・」
「大丈夫だ・・・・・・何とかなる。」
自分の事でもないのに、自分の事の様に悲しんで泣くハニが愛おしくてスンジョは抱きしめた。
「大丈夫だから、ハニは今までどおりにしてくれればいい。」
しゃくり上げて泣いているハニのおでこにキスをして、頬を伝う涙をそっと拭った。
「お休み・・・・ハニがいるから頑張れそうだ。心配しなくていいから。」
深夜遅い時間、ハニの部屋のドアをそっと開けてスンジョは中に入るように促した。
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