スンジョの戸惑い 174
会議室に各部署の責任者が集まって、親父が仕事に復帰できるまでの期間、社長の席を空白にするわけにはいかないから、社長の代理をどうするかを話し合う事になっていた。
恐らく自分がそのまま社長代理として、社長の業務をして行く事にはなるだろう。
それと同時に、問題を起こした経理部長の処遇についても決めなければいけなかった。
会議室の座席は、何年も決まった座席にそれぞれが座っていたが、スンジョはその光景に違和感を感じた。
「すみません、机の並び替えをしませんか?話し合うのにお互いが離れ過ぎていて、意見が出しにくいと思いませんか?」
会議室の机を並び替えて、それぞれが着席をすると経理部長だけが離れて座った。
「これで、皆さんの顔がよく見えるようになって話しやすいと思うので、いいアイデアが出そうです。」
「さあ、始めましょう。」
「スンジョさん・・・・あの・・・・これを・・」
経理部長はスンジョのすぐ横に来て、一通の封筒と社長印、そして盗み出した書類をテーブルの上に置いた。
「封筒の中は何でしょうか?」
「辞表です。ご迷惑くをおかけしてしまって・・・・」
スンジョはその辞表を受け取らず、そのまま経理部長に返した。
「ご自身がなさった事については、今後これからどうするのかを話し合う前に、会社を辞めるという事で終わらせるつもりですか?」
スンジョの冷たい言い方に言われた本人だけではなく、会議に出ていた人は驚いた。
「申し訳ありません・・・・・」
「あなたのなさった事は、経理部長としてはしてはいけない事。社印を持ち出して、何がしたかったのですか?社長が倒れた事はそれが原因ではないですが、責任を取ってもらいますね。」
会議の中でもスンジョの立場はアルバイトの学生。
それでも社長がいない今は、自分が社長の代理として決めなければいけない。
「社長が倒れて現在は社長不在ですが、きっと社長ならこんな処罰をしたと思います。」
人のこれからを決める自分の一言が、父が仕事に戻った時に、どう影響されるのか。
生まれて初めて、人の心配をするという気持ちを感じた。
「経理部長は、今まで会社を支えてくれました。今ほど従業員も多くない時も、資金繰りや仕入れや支払に関わる仕事を遅い時間まで責任を持ってこなしてくれた事に感謝していました。そんな社長をあなたは裏切ったでですから、私の考えを社長の考えとして受けとめてください。」
会議室にいる人たちは、スンジョの口から出てくる次の言葉を待った。
「経理部量はその役職を剥奪して、今後は宣伝部に移動し、宣伝部長の下で新人と一緒に外回りをして、一から出直してください。」
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