スンジョの戸惑い 175
スンジョの下した経理部長に対する処分に一番驚いたのは、処分を言い渡された経理部長本人。
「スンジョさん・・・・私は家族にも、自分がした事を話をして来ました。大切な社印や書類を持ち逃げしたので、罪を償って・・・・・・・」
スンジョは表面では平気な顔をしていたが、内心は違っていた。
父ならどうしたか・・・と。
<家族のため社員の幸せのため。その環境が、子どもにも安心なおもちゃを開発する事が出来る>
その言葉は創立以来変わらぬ、ハンダイの会社モットーだ。
ハンダイ創始者で、スンジョの曽祖父のペク・スジョンは、わずか数人の友人と自分を含めて3人で会社を興した興した。
子供が喜べば、親も他の家族も喜ぶし、それが家族の幸せ。
未来を担う子供たちの為に、人を信じて助け合って行く。
真面目にコツコツと積み重ねてきた実績が、会社を大きくして来た。
「ありがとうございます。」
「何も会社の事を知らない自分が決めた判断ですが、皆さんの意見はいかがですか?」
「いえ・・・・・・若いスンジョさんの判断は、ペク・スチャン社長と同じだと思います。」
一人がそう言うと他の人もそれに頷いた。
別の一人は、スンジョの判断についての説明を求めた。
「どうしてそういう判断をされたのですか?もっと厳しくされるかと思いましたが?」
「厳しく・・・・・・厳しくないですか?経理部長が今まで会社でして来た事を考えて決めたのですよ。リ●マンショックの時に、いくつもの会社が経営の危機に陥ったのに、ハンダイは経理部長がいたからビクともしなかった。それくらいの能力のある人材が、宣伝部で新人と一緒に仕事をするというのは、かなりプライドが傷つく処罰ではありませんか?」
まだ学生のスンジョの考えを聞いて、父親より年上の社員は、スンジョの判断能力に何も言えなかった。
スンジョはそのまま、その場の全員の推薦でスチャンが復帰するまでの間、社長代理として仕事をして行く事になった。
会議室を出ると、スチャンの秘書が落ち着かない様子で待っていた。
「スンジョさん、社長が倒れる前から約束のあったオリエントコーポレーションのユン会長がお見えです。」
ユン会長は父スチャンから聞く話によく出ていた人物だから、名前だけは知っていた。
初めて社長代理としての仕事をするために、ユン会長が待っている開発室の中にある社長室に向かった。
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