スンジョの戸惑い 177
「君のこれからを期待するぞ。」
「ありがとうございます。」
ユン会長と話をして融資額について、いい感触でほぼ合意した事にスンジョはホッとしていた。
ユン会長は帰り際に秘書に何やら耳打ちをして、それが終わるとスンジョに軽く手を挙げて迎えの車に乗り込んだ。
スンジョと秘書はエレベータに乗り、開発室の階のボタンを押した。
ドアが閉まるとすぐに、秘書はスンジョに話しかけた。
「スンジョさん・・・・・少しいいですか?」
「はい。」
二人だけで誰もいない庫内。
秘書にしたらいつもハニと一緒にいるスンジョ以外の誰にも聞かせたくなくて、その時を選んだような気がした。
「会長が、出来るだけ早くにプライベートで会食の機会を儲けたいと申しておりました。」
スンジョにしても特別忙しい事も無く、会食するくらいどうって事はないと思った。
「僕の方は特にいつでも構いませんが。」
そう答えたのに、まだ何か言いたそうな様子にスンジョの方から聞き返した。
「まだ何かありますか?」
「その時に、会長自慢の孫娘を紹介したいそうなんです。」
「お見合いですか?」
秘書は驚いたのか、振り返ったスンジョの視線からビクッとして視線を外した。
「ええ・・・・まぁ・・・・・・でも、スンジョさんはオ・ハニさんと・・・・・・」
「会社として必要なお見合いでしたら、時間を決めてください。」
_____チン!と言ってエレベーターが停まると、ドアが開いて人が・・・・・・ハニが乗って来た。
「スンジョ君、一緒になったね。」
ハニの明るい笑顔を見ると、さっき秘書から言われたユン会長のお見合いを仕事の一つとして割り切る事に気が重く感じる。
「お前なぁ・・・・・・来客にお茶を出す時は、余計な事を言わなくていいだろう。」
「余計な事?」
後にいる秘書が、オレ達の会話を聞いている事は判っているが、ハニにだけは見合い話を知られたくなかった。
山積みになっている書類がかなり片付き、社長室のガラス越しにハニが開発室内を元気に動き回っている姿が見える。
積み上げられた机の上のファイルを床に落として、大袈裟すぎるくらいに従業員に頭を下げて謝っている。
そんな姿が、今のオレにはホッと息抜きが出来る光景だった。
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