スンジョの戸惑い 178
見舞い時間外に訪れた病棟で、ナースステーションで待機している看護師に挨拶をして親父の病室に向かった。
静かに病室のドアを開けると、心労とここ数日の看病疲れでお袋は転寝をしていた。
静かに病室に入ると親父はオレの気配で目を開けた。
「スンジョ、来てくれたのか・・・・・・・」
まだ力ない声だったが、少しは回復した事にホッとした。
「すまんな・・・ママから聞いた。」
「何も気にしなくていいから・・・・親父はしっかり養生して、復帰する事だけを考えてくれればいいから。ユン会長と融資金額について話したよ。」
「そうか・・・・・・・」
「今度、ユン会長と会食の席を設ける事になった。」
親父は一瞬何かを感じたのか、表情が変わった。
「それは・・・・・何か言っていなかったか?」
「何も。」
今の状態の親父には言えないし、ましてや傍に転寝をしているとはいえお袋がいる。
ハニの事になると周りが見えなくなって興奮するお袋だから、ユン会長の娘と見合いをするとはとても言えなかった。
「スンジョ・・・・・・ママとも話したのだけど、ハニちゃんとの将来を考えないか?旅行した時に、おじさんにも話したんだ、ハニちゃんをうちのスンジョの嫁にもらえないかと。」
「ハニの事は好きだけど、先の事はまだ考える余裕がない。もう帰るから・・・・明日はユン会長との会食があるから来れないとお袋に言っておいてくれるかなぁ。」
お袋が起きる前にオレは病室を出た。
親父もおじさんも羨ましいほど仲の良い親友同士。
ハニと結婚すればお袋も親父もおじさんも喜んでくれる事は判っているが、親父たちの事より会社の方が今は優先だ。
そう思っていても、ハニを諦める心準備が出来ないし、ハニ自身オレが見合いをしたらどうなってしまうのか心配だった。
「ユン会長との打ち合わせの書類を作成するから、コーヒーを持って来てくれ。」
「は~い。」
ハニの明るい声を聞くと、秘密にしている事があるから胸が締め付けられて来る。
「そうだ・・・明日の夕食はいらないから。ユン会長との会食の約束があるから遅くなる。」
折角簡単に私でも出来る料理の本を買ったから、スンジョ君の為に新しいメニューに挑戦しようと思っているのに・・・・・と、ぶつぶつ言っているハニから視線を外して、経営に関しての本を探すために書斎に入った。
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