スンジョの戸惑い 181
会長は、こう言いたかったのだろう。
ヘラと結婚して後継者を作れば、ハニとそのまま付き合っても良いと。
そんな事ハニにさせたくない。
「お帰り。」
何も知らないハニが、玄関を開けて家の中に入ると嬉しそうに駆け寄って来た。
昨日の事など忘れたかのように、いつもと変わらない曇りのない笑顔。
「早かったね、スンジョ君ご飯食べてくると思って作ってないよ。」
ダイニングの方からウンジョが自分の分を半分あげると言っている。
「いや・・・・・・ハニが食べ終わったらおじさんの所に一緒に行こうか?」
「パパのところ?」
「ああ。」
「今日は忙しいんだって。予約の団体さんが見えているから、家に帰れそうにないって。明日じゃダメかなぁ・・・・・」
一日遅れでもいいか。
「じゃあ・・・明日。明日おじさんの店に行くから・・・・ウンジョはママに帰って来てもらうから留守番していてくれ。」
お袋が病院に泊まり込んでから、ずっとハニは家の事を一生懸命にしてくれている。
包丁の使い方も危なっかしくて、料理人の娘なのにまともな物は作れないが、美味しく作ろうと努力している。
何一つ満足に出来ないのに、諦めないで最後までやり遂げようとしているハニの姿は綺麗で輝いている。
「ハニ、ハニはオレが誰と見合いをしたのか知っているんだろ?」
ビクッとしたハニの様子で、無理に明るくしていたハニの顔が曇った。
「ヘラ・・・・・・」
「誰に聞いたんだ?」
「会社で先輩たちが話していて・・・・・・・・会社の為にお見合いをするって・・・・結婚するの?ヘラと・・・・・・」
さっきまで笑っていたハニが俯いて、涙がポトリとダイニングテーブルの上に落ちた。
「見合いは、結婚が前提だろ?」
「そうだよね・・・・」
まだ、言えない。
おじさんに話す前には。
先にハニに話して期待させておいて、おじさんに話して許してもらえなくて落ち込むハニの顔を見るのが辛い。
ハニは笑顔が一番かわいいのだから。
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