スンジョの戸惑い 183
「見合いを断ったりして、会社の方はいいのか?」
「大丈夫です。おじさんにハニとの結婚を承諾されてから、親父には事情を話しますので。家庭同様に会社も大切にして来た親父ですが、仕事をする上で一番大切なのは家族だと言っていました。それは会社のモットーの一つでもあるので、わかってくれると思います。」
わずか20年しか人生経験がないのに、しっかりしたものの考えに、ギドンは感心したように頷いて聞いていた。
「スンジョ君は、やっぱりわしの大切な友人の息子だ。よく似ているよ、スチャンの若い時に。」
「似ていますか?」
云々と何度も頷くギドンとハニの顔を見て笑った。
「いつかスチャンに聞くといいよ。君の両親が結婚までに至った話を。聞いた事はないだろ?」「はい。」
「ワシの口から言う事ではないから、君から聞いて見なさい。本当に君の考えはスチャンに似ているよ。そんな親友の息子だから、ダメ娘を任せてもいいが・・・・・・」
ダメ娘と言われて、むくれているハニの顔を二人はチラッと見た。
「ハニは君も知っているとおり、頭も悪いし料理も出来ない。おまけにオッチョコチョイで、勝手に一人で落ち込む。言いたい事は言えそうで言えない・・・・・・・・悪いところを上げたら切りがないが、親バカだと思われても構わないが、ハニの笑顔は天下一品だ。それに、自分が信じた道をどんな困難があってもそれに向かって行く根性は誰にも引けを取らんし、それがハニのいいところだ。」
「判っています。ハニのいいところも悪いところもすべて受け止めますので、結婚のお許しを貰いに来ました。」
「娘を・・・ハニをよろしく・・・・スンジョ君。」
「いいよな、ハニ。」
気が付けばハニは顔中、涙だらけになって泣いていた。
2階の個室から出て、階段を下りる時に少し後ろにいたハニの手をしっかりと握った。
いつもそんな事をした事のないスンジョの行動に、ハニはビックリして顔を上げた。
「繋いだ手は離さないからな。」
ハニは止まっていた涙がまたあふれ出した。
そんな娘を見てギドンも、もらい泣きをしている事に気が付いた。
「ナンヤナンヤ・・・・二人して手ぇをつないで・・・・・」
スンジョとハニが付き合っている事は知っているが、ジュング自身もそんな二人が手をつないでいる姿は初めて見て、無性にイラついていた。
「ジュング・・・・・ハニと結婚する事にした。だから、もうハニの事は諦めてくれ。」
スンジョに言われてジュングの顔は数秒で血の気が薄れ・・・・・・・・・・・気が付けばその場にしゃがみ込んでいた。
「結・・婚・・・・結婚・・・・・・・・」
ギドンの店から出て来てからのハニは、ずっと同じ言葉を繰り返していた。
「さっきからずっと同じ事を言っているけど、嫌ならいいよ結婚するのは。それならそれで、まだ見合いを断っていないからオレはヘラと結婚するから。」
「ううん・・・違うの・・・それだけは嫌、ヘラと結婚するのだけは。ただ・・・・・・・」
「ただ?」
「ヘラと結婚しないと会社が・・・・・・・・・」
ヘラと結婚するのを嫌がっているのに、ヘラと結婚しない事で会社がどうなるのかを心配するハニは、いじらしくて仕方がなかった。
ここが車の中で運転中では無かったら、ハニを抱きしめて沢山キスをしたいくらいだった。
「何とかなるさ・・・オレの間違った考えを正してくれたお前だから、お前がいればきっと会社の危機も乗り越えられる。もう、ハニは何も心配しなくていいから。」
付き合いだしてから優しくなったスンジョが、更に優しくて頼れる人になった事にハニはまた涙を流した。
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