スンジョの戸惑い 185
「綺麗よ・・・・ハニちゃん。」
「そうですか?でも・・・・恥ずかしくて。」
ハニは鏡に写る自分の姿を見て、恥ずかしそうに笑っている。
「恥ずかしくなんてないわ。ほら、お兄ちゃんがさっきからハニちゃんを私に捕られたって顔をして見ているわ。」
愛娘をいとしそうに眺める気分を味わっているグミは、今までで一番幸せなのかもしれない。
ウエディングドレスの隅から隅まで確認するようにしている母の姿を見ると、コレが家族にとって一番よかったのだとスンジョは思った。
「具合が悪くなったらちゃんと言うのよ。」
「大丈夫です、おばさん。」
ハニのその一言でも、グミはすぐに涙を流す。
「ハニちゃん・・・・・お母さんって呼んでくれるかしら・・・・・・・」
「お母さん・・・・・・・」
ハニを抱きしめて、嫁がせる娘を最後まで離したくないようにしているグミ。
「どうして・・・・スンジョみたいな人と結婚するのかしら・・・・・・・」
さすがにスンジョも、ハニから離れないグミにイライラは頂点に達した。
「おい!お袋がオレとハニを結婚させたがっていただろう。おまけに結婚するのはハニが大学を出てからだって話したのに。」
ようやくハニから離れたグミはスンジョを睨みつけた。
「何が大学を出てからよ。ハニちゃんをこんな風にして・・・・・・・・待ち切れなかったのはスンジョでしょ!」
そう言われればなんとも言い返す事が出来ない。
二人で正式に結婚を前提とした付き合いをする事を、ハニの母親の墓前に報告に行った帰りに泊まった星屑湯で、グミがいないと言うのが引き金になったのかスンジョの理性も抑え切れなかった。
グミは大きくなったハニのお腹を、そっと労わるように手を添えた。
「まっ・・・・・別に産まれてから結婚してもいいけど、二人三人と孫が増えていくのなら、早い時期に結婚しても構わないでしょ?将来、医者になる男が彼女の身体の事も考えないで襲うからよ。本当に・・・・責任を取るのは当たり前でしょ。」
スンジョには目を吊り上げて怒るのに、ハニには全く表情を変えて優しそうに話をする。
「ハニちゃん!産むのなら絶対女の子ですからね。男の子だったらスンジョの遺伝子を継ぐわけだから、絶対に最悪な性格の子になるのは間違いないわ。もし男の子が産まれるのなら女の子が産まれるまで、二人で毎日頑張ってね!!」
係りの案内で、来客の挨拶にグミはロビーに出て行った。
「ったくお袋は・・・・・いったい誰のせいでこんなに早くハニと結婚する事になったんだよ。」
「スンジョ君・・・・ごめんね・・・・」
「何が?」
「赤ちゃんが出来ちゃって・・・・・」
グミに対して怒ってはいたが、ハニには怒りも何もなくあるのは愛する事だけ。
「ハニは何も悪くない。お袋が言うようにオレが待ち切れなかったのがいけないんだ。産まれてくる子が男の子だろうと、女の子だろうとオレにはどっちでもいい。ハニがオレの傍にずっといてくれるだけでいいのだから。」
産まれてくる子供は女の子だと、スンジョは知っていた。
産まれれば産まれるで、グミの孫娘を溺愛する事が目に見えているから、この先何十年もスンジョの戸惑いはきっと続くのだろう。
0コメント