ハニの戸惑い 6
授業が終わって二人で病院棟に行った時は、スンジョ君に注がれる憧れのような視線とは別の、私に注がれる≪なんであんな子が≫的な視線が痛かった。
こういう視線にも少しは慣れていたけど、スンジョ君と大学を出たら結婚する事を決めてからは、不安が消えるどころか逆に不安が増えている。
毎晩バルコニーで二人並んで夜空を見上げる時は、後ろからハグしてくれるスンジョ君の温もりがすごく幸せだから、本当に私を選んでくれてうれしい気持ちにはなる。
高校から私たちの事を知っている人たちの中には、好意的じゃない事を言う人もいる。
「同居しているから、嫌いでも好きになる」
と言う人もいたけど、スンジョ君は不器用だから嫌いな人を好きにはならない。
「産科はここだ。」
スンジョ君にそう言われると、急に恥ずかしいのと怖い気持ちが出て来た。
「すみません・・・初診ですけど。」
スンジョ君と同い年だけど、私は実年齢より幼く見えるから、産科のベンチにいる妊婦健診の人たちが、ジロジロとさっきから見ている。
私もスンジョ君も、結婚指輪をしていないからだろう。
あの子、高校生よね・・・
彼の方は大学生くらいよね
結婚はしていないみたいだけど
そう言った事は、いつも地獄耳な自分が憎かった。
「気にするな。オレはハニを選んで、ハニの子供が欲しいのだから。」
スンジョ君にも聞こえていたみたいで、その言葉に噂している人たちにスンジョ君が話した事が聞こえたのか、急に黙って横を向いた。
「ほら、トイレに行ってこのカップに入れて来い。」
「お水を飲むの?」
呆れた顔でスンジョ君は、私の頭を軽くゲンコツした。
「バーカ、尿検査だ。受付で、妊娠検査の人は採尿してくださいって言われた。」
スンジョ君から手渡されるカップを貰って検尿すると思うと、恥ずかしくて下を向いてしまった。
「オレにも一緒に入って欲しいのか?」
「じ・じ・冗談・・・・・・一人で行けるよ。」
さすがにね、一緒にトイレには行けないよ。
本当なら市販の簡易検査でしてから病院に来るのだろうけど、スンジョ君が私のバイオリズムもしっかり把握しているから、間違いないと言っていた。
検尿カップを、検査口にある台に乗せて手を洗っていると、急に吐き気が襲って来た。
「うっ・・・・ぅっ・・・・・」
時々吐いていたけど、今日は朝から食事も摂れなくて、学校に来てからもみんなの視線で緊張していたからか、いつもより気持ち悪くて冷や汗も出る。
こんなに苦しいのに本当に赤ちゃんが出来ていなかったらどうするんだろう。
だって、星屑湯に行った時が初めてで、あれからまだ2週間くらいしか経ってないよ。
「ハニ・・・ハニ・・・大丈夫か?」
スンジョ君がなかなか出て来ない私を心配して来てくれていた。
「気持ち悪・・・・・・」
「誰もいないよな?」
トイレの中に誰もいない事を確認して、スンジョ君が迎えに来てくれた。
「名前が呼ばれたよ。歩けるか?」
コクンと頷くだけしか出来なくて、トイレに吐いた物をスンジョ君に見られたくなくて、水を流すレバーに手を伸ばすと、私よりも早くスンジョ君が流してくれた。
「悪いな・・・・オレがハニと代わってやれるなら、代わってやりたいよ。」
大丈夫と言いたいけど、言えないから首を横に振った。
ママも私が出来た時、パパに優しくしてもらったのかな?
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