ハニの戸惑い 10
「パ・・・・」
「ハニちゃん、おめでとう!」
父よりも速くハニの前に出てきたグミは、これからされる報告の内容がすでに判っていたのか、目を潤ませていた。
「ハハハハ・・・・なんと言うか、親子二代続いて順序が逆になったな。」
スチャンは普通の人よりも広い額まで顔を赤くさせて嬉しそうに笑っていた。
「まだ何も言ってないけど、違っていたと言い出せなくなるな。」
スンジョ君がそう言った時、私は赤ちゃんが出来てしまった事に、もしかしたら後悔しているのだろうかと思った。
恐々と、横に立っているスンジョ君の顔を見上げると、微かに笑っているのが判った。
「本当なの?私の勝手な思い込み?」
おじさんの顔から赤味がサッと引いて、チラッとパパの顔を見ると複雑な顔をしていた。
いくら大学を出たら結婚をすると言っていても、赤ちゃんが出来る事を、娘が知らない間にしていたのだから。
星屑湯での時も、家に戻ってからパパはこう言っていた。
「結婚式を終えるまで、何事もなければパパは気にしないよ。順番だけは守ってくれよ。」
と、言った意味はバカな私でも解っている。
シ~ンと、静まってしまった店の中で、一人だけ喜んでいるジュングは、ホッとした顔をしていた。
そんな時、スンジョ君は今度はハッキリと判るようにニヤリと笑った。
「3週目に入るところだ。」
「お兄ちゃん!どうしてそんな大事な事を言うのに、嘘なんて吐くのよ!」
「いつもお袋に勝手にいいようにされるから、ガッカリした顔を見てみたかった。」
初めて見たスンジョ君のそんな所に、私が呆気にとられているといたずらっ子のような顔で笑った。
こんなスンジョ君も、私ったら結構好きだったりして。
パパ、ごめんね。約束を守らなくて。
でもね、スンジョ君が赤ちゃんを産んでもいいって言ってくれたから。
スンジョ君の笑った顔を見ると、これから先どうなるのか判らないけど喜んでいいのかまだ私は分からない。
「じゃぁ、急いで式場を探さないといけないわね。」
「探さなくていい。」
「いいって・・・・スンジョ、ハニちゃんのお腹に赤ちゃんが。」
「結婚式はまだしない。」
スンジョ君のさっき言った冗談の時と違う空気が、店の中に漂った。
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