ハニの戸惑い 13
ハニの懐妊を祝う会を終えて、スンジョ達家族が帰った後、ハニは父と店の片づけをしていた。
「疲れたか?」
「ちょっとね・・・・・」
「一緒に帰ればよかったのに。」
いつの間にかまだ子供だと思っていた娘が、9か月後には母親になる。
親友の家に同居して、親友の自慢の息子に片想いをしている事を知った。
親友の妻は娘を実の子供よりもかわいがり、知らない間にお互いの子供たちは付き合うようになっていた。
大学を出たら結婚させてくださいと言っていたら、それからすぐに娘が妊娠した事を知った。
結婚式は挙げないが、入籍をする。
本当ならきちんと式を挙げて欲しいと思っているが、親友の息子だと言う事と優秀な男だからきっと何か考えがあるのだろうとも思っている。
「あとは明日の朝、店を開く前に片付けるから、ちょっと奥で話そうか。」
手を拭いて父に付いて、店の奥にある父の部屋に入った。
「座って、待っていてくれ。」
一人残った、久しぶりに入った父の部屋。
リフォームをした店だが、ここだけは昔のまま。
ここでハニは、仕込みが終わるまで母と待っていた。
壁には傷を付けた痕もそのまま残り、ここで倒れた母が吐いた血の跡も少しだけ残っている。
そんな妻の思いでを忘れたくなくて、この部屋だけリフォームをしなかった。
「これをな、ハニに渡そうと思って探して来た。」
どこかにしまってあったのか、ギドンは持って来た古い箱をハニに渡した。
「開けていい?」
ニコッと笑って父は頷いた。
古い箱の中には綺麗にアイロンを掛けられて畳まれたベビー服が入っていた。
「ハニが着ていた産着だ。ハニに弟か妹をと考えていたけど叶わなかったな。ママが、死ぬ間際にハニが結婚して赤ちゃんが出来たら、渡してと言っていた。」
小さな産着を着た自分は、写真の中でしか見た事がなかった。
幼い頃に母を亡くしたから、母との思い出はあまりない。
「ハニ・・・・・本当に結婚式を挙げなくていいのか?」
「パパ・・・・・・」
「スンジョ君やスチャン達と仲違い(なかたがい)させないために言ったのは判るよ。パパには本当の事を言ってもいいから。」
ドキドキとしていた。
ギドンとスチャンが自分の事で仲違いしてもいけないし、自分の気持ちを言ったらスンジョ君に嫌われてしまうかもしれない。
「ママの夢は、ハニの花嫁姿だ。ハニの花嫁姿をせめて写真だけでもいいから写してくれないか?」
自分だって本当はウエディングドレスを着たい。
スンジョ君の横に並んで結婚の誓いをしたい。
「言ってごらん、親に内緒をする事はいけない。」
「うん・・・・・・・本当はね・・・・・・結婚式をしたい・・・・・・・」
小さな声で言うハニは、その一言を言うと涙を流した。
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