ハニの戸惑い 18
昨日の夢はなんだったのだろう。
そういえば・・・この家に来てから、ママのお墓に行ってなかった。
パパは、時々行っているのは知っているけど、私はスンジョ君の事ばかり考えていて、すっかり忘れていた。
「どうかしたのか?」
「えっ?」
「食事が進んでいない。ボウッとしていると、遅刻するぞ。」
「気分がよくなかったら、ハニちゃんの好きな物を用意するわよ。」
「大丈夫です。」
ダメダメ。
嫌なことは、すぐに忘れて・・・・って言うか、私は大切な事を直ぐに忘れてしまうし、忘れた方がいい事は忘れないのだった。
おばさんが心配そうに、私を見ているから平気な顔をしないとね。
おばあちゃんが言っていたっけ。
「朝は暗い顔をしていると一日暗くなる。朝は出来る限り明るくしなさい。」
おばあちゃんは、ママの代わりに沢山の事を教えてくれた。
学校に行く私たちを見送るおばさんに、元気な顔で挨拶をして家を出た。
本当なら公共交通機関を使って、手を繋いで登校したいけど、妊娠した私の為に車での登校にしてくれた。
スンジョ君の運転する車の助手席は私の指定席。
ちょっと小さいけれど、この車の中は二人っきりになれる場所。
「赤ちゃんが産まれたら、車を大きくしないといけないね。」
「無理だな・・・・・」
「どうして?チャイルドシートを付けると狭くなるよ。」
「考えてみろよ。オレ達、まだ学生だ。親の金に頼らないといけないのに、車を変えたいとはさすがに言えないだろう?」
「そっかぁ・・・・・・」
私はいつも、自分の置かれた立場を考えないで言ってしまう。
「オレ達が心配しないでも、お袋が全部準備をするだろう。ほら、着いたぞ。」
学生駐車場に車を停めると、そこで私たちはいつも別れてそれぞれの学部に移る。
「おい、忘れていないか?」
「忘れ物はしていないよ。」
「違う違う・・・・ほら・・・・・」
ああ、そうか・・・これね・・・。
ハニは、またスンジョの所に戻り背伸びをしてキスをした。
ところが直前にスンジョはそれをサッとかわしてムッとしている。
「何を考えてるんだよ。」
「キスでしょ?」
「バーカ、今までそんな事をしていたかよ。帰りにいつもの場所で待っていろと言っただろ。大切な話があるから。」
あっ!そうだった。
どうも私は一つの事をすると、また一つの事忘れてしまう。
この忘れっぽさの所為で、スンジョ君に飽きられないようにしないとね。
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