ハニの戸惑い 21
「二人だけで結婚式をするの?」
「あぁ、嫌か?」
「嫌って言う訳じゃぁないけれど・・・・」
嫌って言う訳じゃない
だけど、沢山の人に祝ってもらいたい。
ハニの心の言葉が解るのか、それともまたハニの独り言が聞こえたのか。
「癪に障るじゃないか。ある部分は大人だからと責任を押し付けられて、ある部分は親にさからわないオレは、人から見れば優等生かもしれないが、大人の都合のいいようには物事を送りたくない。」
スンジョの長い腕が優しくハニの肩を抱くと、緊張しながらもハニは頭をスンジョの肩に預けた。
「ハニが願うように、沢山の人に祝ってもらう結婚式は挙げてもいいとは思うが、きっとお袋の思うようにされる可能性の方が大きい。」
スンジョの長い指は、ハニの柔らかい栗色の髪の毛を弄んでいる。
いつも二人で並んで座ると、そうする事が当たり前であり二人だけの幸せでもあった。
「オレは、ハニさえいればそれでいい。そのうちオレ達の意見も気かずにお袋が何かしでかすとは思うけど、オレの稼いだバイト代で挙げる式は嫌か?」
嫌じゃない。
私もスンジョ君さえいてくれれば、ドレスを着なくてもいい。
「いいよ。私、スンジョ君を信じて年を取るまでずっと一緒に行きたい。」
「そうか・・・・じゃあ、これで決まりだ。行くぞ。」
「行くぞって・・・どこに行くの?」
「式場だ。いくつか下調べをしてあるから、見てハニが気に入った所に決めようかと思う。」
二人は立ち上がって、学生駐車場に停めてあるスンジョの車に乗った。
スンジョ君が見つけてくれた式場は、小さな小さな町の教会。
大きな家が並んでいる中、少し・・・ううん・・・かなり古いけど歴史がありそうな教会は、古い足ふみオルガンと古い祭壇。
祭壇の所に飾られているステンドグラスから射し込む光と、燭台の彫刻部分が煤(すす)で黒ずんでいる所を見ると、スンジョ君のこだわりとかもしれないけど、吸血鬼が出そうなくらいに暗い室内だった。
「古いね・・・・・・吸血鬼が出そう。」
「古いけど、お化けも吸血鬼も出ないぞ。」
ニヤッと笑うスンジョ君の方が怖く感じた。
「家の近くだけど、お袋の行動範囲から離れているから、ここは気が付かれないと思う。」
弾けもしないのにオルガンの蓋を開けて、キーを幾つか押すと、学校の授業で聞くオルガン演奏曲のように綺麗な音ではないけど心が落ち着くような気がした。
「こんにちわ?」
私がオルガンを弾いたからなんだろうな。
「すみません・・・オルガンは弾けないのですがつい・・・・・・」
「構いませんよ。」
神父さんというのは、こんな風に静かに話すのかな。
「突然なんですが・・・・・二人だけで結婚式を挙げたいのですが。」
遠まわしに言ったハニだったが、スンジョははっきりと結婚式をここで上げたい事を神父に伝えた。
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