ハニの戸惑い 25
「さぁ・・・次は・・・・・指輪か。」
店を出る少し前から、ハニが塞ぎ込んでいる事に気が付いたスンジョは、助手席に座るハニの様子を伺った。
「どうかしたのか?」
「ううん・・・・・・・ただ・・・・・・」
「ただ?」
言いにくそうにしながらも、ドレスの入っている箱をチラッと見たハニが、何を考えているのかおおかた判っていたがあえて聞いてみた。
「最初に試着した方のドレスじゃないから、気に入らないのか?」
「そうじゃなくて・・・・・・」
言わないとね・・・いけないよね。
「ドレス・・・・スンジョ君に払ってもらって・・・・・・」
「それがどうかしたのか?」
「した・・・・・の・・・」
締めたシートベルトを外してハニの方を見ると、ハニの顎を上げていつもハニが不安そうにしている時にそうしているように、しっかりと視線を合わせた。
「言ってみろよ。気に入らなかったら、返品してくるから。結婚式は女の子が主役だ・・・・と、お袋なら言うだろうな。」
「ずっとスンジョ君の家でお世話になって、おばさんには洋服とかアクセサリーに化粧品や美味しい物までいつも買ってくれるし、美味しいご飯も毎日食べさせてもらっているのに、ドレスはスンジョ君が買ってくれるし・・・・・」
「お袋は娘が欲しかったから、ハニにしている事は昔からの夢だったからな。それと、ドレスは・・・・オレのバイト代で買える範囲だから気にするな。この結婚も、ある意味オレに責任があるからな。」
「責任?」
大きな黒い目でハニが見つめると、その視線を外したのはスンジョ。
「言いにくいな・・・・・・・大学を出てから結婚するって言ったのに、順番が逆になってしまった。」
鈍いハニでもスンジョの言った事に気が付いたのか、恥ずかしそうに手で口元を隠した。
「それは・・・・・ご・・・ご・・・・合意の元で・・・・・・嫌なら私は叫んで逃げていたよ。」
嫌じゃなかった・・・・と聞こえない程の小さな声で話しても、スンジョにはその声はしっかりと聞こえていた。
「ハニの言葉を借りて言えば、このドレスはアッパに買ってもらったんだよ。この時にはねあなたがオンマのお腹にいたの・・・・・・」
ハニの声色を真似ているつもりの、スンジョのその様子があまりにも可笑しくてハニは笑い出した。
「笑ったな、お前は笑った顔が可愛いよ。ついでに、写真を撮るからその話がのちに子供たちに伝える事が出来る・・・という事だ。」
「子供たち?写真?・・・・・写真って、スンジョ君写されるのは嫌いでしょ?」
「ひとつくらいまともなオレ達二人の写真があってもいいだろ。二人じゃないか・・・2.5人か・・」
そうか・・と納得しながらも、ハニはハッとした。
「子供たちって・・・・・また赤ちゃんを・・・・・」
「結婚すれば、二人三人と産まれるかもしれないだろ?」
星屑湯に泊まった時は、この先に産まれるかもしれない子供の話などした事はないが、結婚すれば、子供は一人とは限らない事を考えると、ハニの顔はこれ以上赤くならないのではないかというくらいに赤くなっていた。
「二人・・・三人って・・・・・また・・・・するの・・・・・」
「ご希望なら、オレは何人欲しいと計画を立てるのが面倒だから、一ダースでも二ダースでも構わないぞ。」
真っ赤だったハニの顔は、青い顔をしながら何か一生懸命に数えていた。
「二ダースって・・・・・・・24人も?赤ちゃんを作るの?」
スンジョの言葉よりも結構赤くなりそうな言葉を言ったハニは、自分自身恥ずかしくなってカバンで顔を隠した。
そんなハニも、スンジョは好きだ。
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