ハニの戸惑い 34
おばさんの誘いを断れなかった。
って言うか、甘い物につられてしまった感じもする。
「どれにする?なんでも頼んでいいわよ。」
「はい・・・・・・」
う~私はなんて意思の弱い人間なんだろう。
目の前に一つどころかいくつものスィーツが、二人がけのテーブルを埋め尽くしていた。
どれにしたらいいのか迷っていたら、おばさんは私が迷っていた物を全部頼んでしまった。
「こんなに食べられません。」
「大丈夫よ、値段の割に小さいし、一口でパクッと食べれちゃうわ。いつもハニちゃん大きなお口を開けて食べているじゃない。」
よくスンジョ君に言われる。
デカい口を開けて・・って。
だって、ケーキはスポンジ部分と上のクリームの部分と一緒に食べると美味しいんだものね。
甘い物の誘惑に負けて、知らないうちに私はケーキを二つにプリンを一つ食べていた。
おばさんは、何も食べないで私の顔をニコニコと見ている。
もしかしてクリームが顔に付いているのかと思って、口の周りを確かめてみたけど、付いている感じもなかった。
「おばさんは、食べないのですか?」
「ハニちゃんに二つ三つ話したい事があって。それを聞いてから食べるわ。」
ギクッと言う声が聞こえたのじゃないかと思うほど私は戸惑った。
「まず一つね・・・・・スンジョの子供を産んでくれるし、我が家の嫁になる事は決まっているのだから、お式は挙げていなくても私の事を、<おばさん>じゃなくて<お母さん>って呼んでくれないかしら。娘が欲しくて仕方がなかったから、大好きなハニちゃんから呼んで貰えるとすごく嬉しいの。」
なぁんだそんな事なら・・・・まだ嫁でもないけど・・・・・
「いいんですか?小さい頃にママを亡くしてからは言った事がなかったから、ちょっと照れくさいけど・・・・・・・お・・・・・お・・・おかあさん。」
「きゃぁ~、夢の一つが叶ったわぁ。スンジョの無愛想な言い方で<お袋>なぁんて言われていたから、すごく幸せよぉ。」
おばさんのこの小さな事にでも、こんなに喜んでくれる所は好きだなぁ。
「それから、産まれた子供が最初に男の子でも、女の子が産まれるまで、スンジョの子供を産み続けてくれる?」
さすがにそれはちょっと<はい!>とはすぐに言えないけど、おばさんの念願だものね。
「スンジョ君に私が捨てられない限り、おば・・・お母さんのご期待に添えるように頑張ります。」
私は何を頑張ればいいの?
思わずガッツポーズまでしてしまって。
その頃には私はすっかりと、おばさんに聞き出されてはいけない事を忘れていた。
「それは大丈夫よ。スンジョのあの捻くれた性格に付き合えるのはハニちゃんだけだから。捨てられるのはむしろ、スンジョの方よ。」
「大丈夫ですよお母さん、スンジョ君を私は捨てたりしませんから、だって私達二人っきりで結婚式を挙げる約束をしたんですもの!」
言ってしまってから、おばさんの目がキラリと光るまで、私は自分の口から出た言葉を判っていなかった。
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