ハニの戸惑い 41
ジュングに連れられてハニは教室を出た。
お腹が大きくなり始めたハニを気遣い、何度も振り返りながら慌てさせないように躓かないように歩いた。
「どこまで行くの?お弁当は、今通り過ぎた談話ルームでいつも食べているんだけど。」
「もうちょっとや・・・・今日は天気がいいから、芝生の上に座って食べるといい。そこでミナとジュリが準備をしてくれているはずだ。」
ミナとジュリが来てくれているんだ。
いつもミナ達はジュングと一緒に、私の所に来てくれたのに、よく考えれば今日はジュング一人で来てくれていた。
「ちょっと待って・・・・・お腹が・・・・」
「痛いのか?オレが急がせたから・・・・」
「違うよ。昨日の夜中からお腹の赤ちゃんが動くの。」
歪な(いびつな)形になっているハニのお腹を見て、ジュングは真っ青な顔をして見ていた。
「い・・・病院に行った方が・・・それかペク・スンジョを呼びに・・・・」
「大丈夫。病気でもないし異常でもないの。赤ちゃんが元気にしているって証拠なの。」
「そ・・そっか・・・・」
安心しているジュングの顔を見て、クスッとハニは笑った。
「私もね、昨日の夜にお腹が動いた時はビックリして、スンジョ君を呼んだの。」
「そうか・・・・ペク・スンジョを呼んだのか・・・そんな事を聞くと、ハニがペク・スンジョと本当に結婚したんだなと思うよ。」
「まだ結婚はしていないよ。」
「子供が出来る事をしたんだから・・・・同じだよ。」
赤い顔をして言うジュングは、ハニの事をまだ諦めきれていない。
スンジョの子供がお腹にいても、それでもまだ自分の方を振り向いてくれるのではないかと思っていた。
「・・・・部屋は・・・・一緒じゃないから。」
ハニにしてもミナ達以外に、とくに男の子にはスンジョとの事を話した事はないから<子供が出来る事をした>と、言われた言葉が恥ずかしかった。
「ハニィ~ここだよ。」
ジュリが丸々とした身体でピョンピョンと飛びながら、遠くに見えたハニとジュングを手招いた。
「ジュリ・・お昼の休憩なの?」
「へへ・・・・今日は臨時休業なの。目立ってきたねお腹・・・・」
まだマタニティを着ているわけではないが、ゆったり目の服の上からジュリのぽっちゃりした手が触れると、お腹がポコンと動いた。
「お腹が動いたよ。」
驚いてジュリが手を離すと、代わってミナもハニのお腹に触れた。
「昨日の夜から動いたの。ポコンと動くのが、喜んでいる時で、ポコポコッと動くと怒っている時や嫌な時なの。」
「話が出来るんだ。」
「何かね・・・・そんな感じかなって・・・・そう思ったの。」
男のジュングにしたら気にはなるが、さすがに結婚を約束した相手のいるハニのお腹に触れる事は出来ない。
一人蚊帳の外のジュングは、少し拗ねながら持って来た弁当を広げた。
「ほら、シェフが作ってくれた弁当だ。」
「ワー、ハニのパパのお弁当だ。」
女三人は、ジュングが広げた弁当に歓声を挙げた。
母になるハニも、ようやく悪阻が治まり少しずつ食べられるようになると、父の作ったお弁当に手を伸ばした。
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