ハニの戸惑い 47
授業が終わり、学校を出て帰宅をしないでそのまま役所に婚姻届を提出しハニの母のお墓に向かった。
途中、妊娠中のハニの体調を考えて、何度か休憩を取って霊園に着いた頃には薄暗くなっていた。
「暗くなっちゃったね。上着持って来なかった・・・・・」
山手にあるハニのお母さんの眠る霊園は、夕方になるとグッと気温が下がる。
スンジョは助手席に置かれている、自分のショールを後部座席のハニに渡した。
「ほら、これを使えよ。」
「スンジョ君、持って来ていたの?」
「お前に内緒で来る事にしたからな、オレの物を持って来たよ。」
ハニはスンジョのショールに顔を埋めて幸せそうに微笑んだ。
「いい匂い・・・・・・・・・スンジョ君の匂いだ・・・・・・」
「気持ち悪くならないか?」
「どうして?」
ニヤッと笑ったスンジョの表情で、ハニは悪阻の時にメールや電話越しでのやり取りを思い出した。
「もう大丈夫だよ。スンジョ君と同じ車に乗ってもなんともなかったから。」
「そうだよな。悪阻も治まったし、婚姻届を出したからいつからでも同じ部屋になってもいいな。」
「同じ・・・部屋?」
考えたらそうだよね。
結婚式は挙げていないけど、入籍したのだし本当に夫婦になったのだから。
「降りるぞ。」
スンジョが車のドアを開けると、冷たい空気を肌に感じた。
降りる時もスンジョは大きくなって来たお腹のハニを、ふら付かない様に手を貸した。
スンジョの手は大きくて、触れると温かくて、この手を取る事に幸せが実感した。
登り道をゆっくりゆっくり上がって、見晴らしが一番いい場所にあるハニのお母さんとおばあさんのお墓。
スンジョはハニと持って来た供花を置いて、二人で並んで手を合わせた。
「ママ私ね、あと数ヶ月でお母さんになるの。それでね、今日スンジョ君と一緒にお役所に行って入籍して来たよ。」
チラッと横にいるスンジョの方を向いた。
スンジョは今までで一番優しい笑顔でハニを見て頷いた。
スンジョは、ポケットの中から婚姻証明書を出して墓前に向けた。
「お義母さん、これから僕は生涯ハニだけを愛して守って行きます。もちろん産まれてくる子供も大切に育てて、ハニのような娘にして行きたいです。」
「スンジョ君・・・・娘って・・・私性別は聞いていないよ。」
「聞いていなくたっていいさ。オレがそう思っただけだから。」
「そうだね・・・ママ、スンジョ君は何でも知っているの。赤ちゃんが産まれたら、かわいいスンジョ君に似た女の子を連れて来るね。」
「ハハ・・・・・複雑だ。オレの性格に似たら、可愛げないぞ。そうだな・・・・・オレはハニに性格と顔が似ている娘がいいな。頭だけはオレに似て欲しいけど。」
意地悪く笑うスンジョにハニは、ギロッと睨んだ。
「判っているけど・・・・・・・相変わらず意地悪ね。」
車から降りた時は薄暗くなりかけていたが、まだ空が見えていた。気が付けばあっという間に黒い空に星が輝き始めていた。
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