ハニの戸惑い 48
ハニのお母さんが眠るお墓の場所から坂道を下り、車が停まっている所に来た頃には辺りはすっかりと暗くなっていた。
「真っ暗になっちゃたね。」
「あぁ陽が落ちるのも早いからな。星屑湯に泊まる事にしてよかったよ。」
車の中は暖房を入れれば寒くはないが、それでも窓や足元から冷気が伝わって来る。
珍しくスンジョはハニの言葉にビクッとした。
「どうして開けるんだ?」
トランクを開けるにはちょっと都合が悪い。
「足元が寒くなるからブランケットが欲しいなって・・・・確か入れてあったよね。」
そう言われると思って、予め(あらかじめ)自分のショールを助手席に出しておいたが、考えればハニはスンジョが思うよりも寒がりだ。
「判ったよ。トランクの中に大事な検査キットが入っているから、オレが出して来るからお前は車の中にいろよ。身体が冷えるとお腹の子供にもよくない。」
何も疑う事なく、ハニは車に乗り込んだ。
やばかった・・・・
「怪しい・・・・スンジョ君何かを隠しているよね。」
ハニは、スンジョの行動を不信に思った。
振り返ってリアウインドから見えるスンジョの顔は、さっきとは違ってホッとした顔をしながらガサガサとさせてブランケットを探していた。
ブランケットは、探さなくてもいいようにきちんと畳まれている。
日頃からきちんとしているスンジョが、ブランケットを探すのに時間をかけている様子が、何かを隠しているのではないかと思った。
何かを隠している。
いつもは、学校に行ったら寄り道をしないでまっすぐ家にスンジョ君は帰るのに、何かおかしい。
トランクルームを見せないようにしているのは、絶対に怪しい・・・・・
星屑湯に着く頃には辺りは真っ暗で、秋の夜空に輝く星はこの季節から空気が澄んでいるからなのか段々輝きが増してくる。
玉砂利を踏む音が静かな空間によく通って聞こえる。
「宿の人に連絡はしてあるの?」
「まぁ・・・な・・・・・・連絡しておかないとベッドメイキングもされていないし、湯も入れ替えられていないからな。」
車を停めて降りると、必ずスンジョは手を貸してくれる。
そんな優しいスンジョの行動にも、ハニは何かおかしい事に気が付いている。
「着替えのカバンは?」
「後からトランクから運び出すから大丈夫だ。」
やっぱり怪しい・・・・・絶対に何か隠している・
スンジョが、宿のスタッフに挨拶をして鍵を受け取り、二人の記念の部屋まで行かずに大広間控室で立ち止まった。
「あの部屋に行かないの?」
「行くけどその前にここに用事があるんだ。」
ドアを開けると古いからなのだろう。
ギィーっと、歯が痛くなりそうな音がした。
部屋の中を見て、その光景にハニは大粒の涙を流した。
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