ハニの戸惑い 53
二人の結婚を祝ってくれている人たちのいる大広間から出て、二人の記念すべき思い出の星屑の部屋に入った。
「辛いか?」
「ちょっと・・・・・少し横になればいいかもしれない。」
スンジョ君にはちょっと恥ずかしいけれど、トイレに行きたい・・・・・・・・
ベッドに入ろうとしないで、モゾモゾとしているハニの様子にさすがのスンジョもそれに気が付いた。
「オレがいない方がいいか?」
「うん・・・・トイレに行きたい。」
部屋の中に備え付けのトイレがあるが、いくら二人はたった今結婚をしたと言っても、ハニにとってトイレの音は聞いてほしくない。
「終わったら、教えろよ。」
この部屋は母屋から離れていて、待っている廊下はなく室外に出るとこの時期は夜になると気温が下がって寒くなる。
ハニは申し訳ない気持ちで、ドアの向こうに消えたスンジョに両手を合わせて謝った。
「急いでしないと・・・・・・でも、お腹が痛いな・・・・・・」
安定期とはいえ、学校を出てから入籍の為に役所に行き、ハニの母親のお墓参りと少々というよりかなり身体に負担を掛けてしまったのではないかとスンジョは気になっていた。
ハニが自分を呼ぶ声が聞こえずシンと静まりかえっていると、さすがにスンジョは心配になって来た。
そっとドアを開けても、物音一つしない。
「ハニ?・・・・・大丈夫か?ハニ?」
部屋の中の備え付けのトイレの前でスンジョは、中に声を掛けるが返事がない。
鍵は掛っていて開ける事が出来ないし、中でコソコソと音が聞こえるから倒れていないことは判る。
「おい、返事をしろよ。」
「ちょっと・・・・・待って・・・・・・・」
トイレの水を流す音がして、カチャリと鍵が開けられてドアが開いた。
ハニの手に小さく丸められた何かが入っていたが、それを後ろに隠して何も無いような顔をしていた。
「何を隠したんだよ。」
「いいの・・・・・これはいいの・・・・ちょっとね・・・・・・」
「何だ、洩らしたのか?」
冗談のつもりでスンジョは言ったが、それは冗談では済まされなかった。
からかってやろうと思って、ハニを抱きしめた瞬間にそれをスンジョは奪い取った。
「あっ!ダメ・・・・・」
「こんなの持っていないで早く履けよ、風邪を引くぞ。」
見るつもりはなかったが、それを見なければ大事になるところだった。
「お前・・・・・・我慢していたらダメだろう。すぐに医者を呼ぶから。」
「いいの・・・・横になっていればいいから・・・・・」
「何がいいんだよ。流産したらどうするつもりだ。」
「流産・・・・・・」
ハニはそれが血だとは気が付かなかった。
僅かに色が付いただけで、それが血液だとスンジョには判った。
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