ハニの戸惑い 55
必死な顔をして布団を自分の体に巻き付け診察を拒否しているハニに、往診の医師はどうする事も出来ない。
「なぁ・・・診察しないと、処置が出来ないだろう。」
首を振って口さえ開こうとしないハニに、スンジョでさえ何も出来ない。
だって・・・嫌なんだもの。
禿げたおっさん先生のあの手で触れられるのは。
どんな事があっても、診て欲しくない。
「先生、診察しなくても何とかなりませんか?」
「ならないですね。お話を聞く限りでは、切迫早産の可能性もありますが・・・・・」
「それなら・・・・・大丈夫じゃないですか。」
カルテに書く事が出来なければ、処置が出来ない事もスンジョは判っていた。
ハニにしてもそれは十分判っているが、この医師に診られるのが嫌・・・・・・
ただそれだけ。
「先生、オレが診て伝えるのは・・・・何があってもこちらから責任は乞いませんから。」
スンジョが申し出た事に医師はもちろんグミも驚いたが、それよりももっと驚いたのはハニだった。
「スンジョ君に診られるのはもっと嫌!」
「なら、どうするんだ?」
「この禿げた先生で・・・・我慢する・・・・・・」
「ハハ・・・禿げた先生・・・・・診させてくれるのかな?」
「電気を消して・・・・・・スンジョ君が外に出て行ってくれるなら・・・・・・」
「お兄ちゃんと、子供が出来る事をしても嫌みたいね・・・・ホホホ・・・おばさんがハニちゃんの傍にいてもいいかしら?」
「お願いします・・・・・・・・・」
ガッカリして部屋を出て行くスンジョの後姿に、ハニは心の中で謝った。
ゴメンね、スンジョ君・・・・・・
電気を消して診察は出来ないが、薄暗がりでスタンド電気を使って診察をした。
恥ずかしいけど・・・・仕方がないよね。
スンジョ君の赤ちゃんを無事に産むためには、嫌だと思う禿げたおっさん先生にちゃんと診察をしてもらわないと・・・・
「点滴の針の抜き方は大丈夫ですね。後は明日もう一度様子を聞きに来ますので、抜いた針等はこの処理袋に入れておいてください。」
「ありがとうございました。」
点滴処置で大事に至らなかったハニは、散々大騒ぎをしてなんとか診察をして貰う事が出来た。
「良かったわね。点滴だけで大丈夫だって。」
「すみません・・・・大騒ぎをして。」
「だって、恥ずかしいわよね。私だってスンジョを産んだ時、今のハニちゃんくらいの年齢だったけど、恥ずかしくって最初の頃の診察はすごく辛かったわ。産む頃になったら、早くこの痛さから解放して!って、叫べるくらいになっていたわ。」
母がいないハニにとって、グミが自分の不安を取り除いてくれる存在でいてくれる事が嬉しかった。
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